建設工事において、利益にも影響を与えるのが「共通仮設費」です。
しかし、「共通仮設費率は何パーセントが適正なのか?」「直接仮設費と何が違うのか?」と疑問を抱く担当者も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、共通仮設費の定義から具体的な内訳、算出方法、上限・下限値の考え方まで徹底解説します。
正確な積算を行い、適正な利益を確保するためのガイドとしてぜひご活用ください。
共通仮設費とは

共通仮設費は、建物本体の施工には直接関係しないものの、工事全体を円滑に進めるためには欠かせない費用です。
このあと詳しく紹介しますが、現場事務所といった仮設の建物や、工事用の電力設備・給排水設備の設置費用などが該当します。
共通仮設費の金額自体は、工事の規模・種類によって異なりますが、工事全体のコストを管理するうえで重要な役割を担っています。

【一覧表】共通仮設費の種類
共通仮設費の種類を一覧表にまとめました。
| 種類 |
説明 |
例 |
| 準備費 |
工事の準備にかかる費用 |
・測量や調査にかかる費用
・資材搬入費 など |
| 仮設建物費 |
工事現場で一時的に使用する設備の設置・撤去費用 |
・現場事務所の建築費
・仮設建物の解体費 など |
| 工事施設費 |
工事現場に設置する特定施設の費用 |
・仮囲い設置・撤去費
・工事用道路の舗装費 など |
| 環境安全費 |
現場の環境保護および安全確保にかかる費用 |
・粉塵対策費
・騒音対策費 など |
| 動力用水光熱費 |
工事現場の電力、水道、照明といったエネルギー利用にかかる費用 |
・電気代
・ガス代 など |
| 屋外整理清掃費 |
現場の整理整頓・清掃にかかる費用 |
・現場周辺のゴミの清掃費
・雑草刈り取りにかかる費用 など |
| 機械器具費 |
工事に使う機械・器具にかかる費用 |
・重機のレンタル料
・小型機械のレンタル料 など |
上記の表に該当しない費用については、その他とします。
例えば、試掘費や地下水対策費といったものは、その他に該当します。
その他の費用も忘れずに計算しましょう。
共通仮設費とその他費用との違い
共通仮設費を調べていると、以下のような言葉を見かけることがあります。
いずれも共通仮設費と混同しやすいため、ここで違いをしっかりと確認しておきましょう。
直接仮設費との違い
共通仮設費と直接仮設費は、建物に直接関係する費用かどうかという点で異なります。
例えば、仮設事務所・仮設トイレなどは共通仮設費に含まれますが、足場・養生・墨出しなどは直接仮設費に該当します。
工事全体に対して間接的に関わる費用を共通仮設費、建物の施工・構造に関連する特定の作業や工程に直接的に関わる費用が直接仮設費であると覚えておきましょう。
共通費との違い
「共通仮設費と共通費は呼び方が違うだけで意味は同じではないか?」と思われる方もいるかもしれませんが、実は異なります。
共通費は、工事全体を進めるために必要な費用の総称を指しており、共通仮設費・現場管理費・一般管理費の3つの費用で構成されています。
つまり、共通仮設費は共通費の一部です。
工事全体にかかる間接的な費用の総称なのか、共通費を構成する費用の一つなのかという違いがあるため、分けて覚えておきましょう。
現場管理費との違い
共通仮設費と現場管理費は、いずれも工事に間接的にかかる費用のことを指していますが、対象の範囲に違いがあります。
共通仮設費が仮設物や設備に関する費用を対象にしているのに対し、現場管理費は工事の管理・運営に関わる人的・事務的な費用を対象にしています。
例えば、事務用品費や通信費、交通費などは現場管理費です。
共通仮設費および現場管理費はどちらも共通費の一部ですが、対象が異なることを知っておいてください。
共通仮設費の計算方法
共通仮設費の基本となる計算方法は、以下のとおりです。
- 共通仮設費=直接工事費×共通仮設費率×各種補正係数
以下で、直接工事費・共通仮設費率・各種補正係数とは何か確認しておきましょう。
直接工事費
直接工事費は、建物・構造物を完成させるために必要な材料費、労務費、直接経費を合計した費用のことです。
材料費は、資材の購入費や運搬費を含みます。
現場監督・現場事務員といった直接作業を行わない管理者の給与は、現場管理費に含まれるのが一般的です。
また、材料費および労務費以外で工事の施工に直接関係して発生する費用は直接経費に該当します。
共通仮設費率
共通仮設費率は、工事の規模が大きくなればなるほど低くなる傾向があります。
これは、規模の経済性が働くためです。
一般的に共通仮設費は、直接工事費の3〜12%程度が目安です。
| 規模 |
直接工事費 |
標準的な共通仮設費率 |
共通仮設費額 |
| 小規模工事 |
1,000万円 |
8.5〜12% |
85〜120万円 |
| 中規模工事 |
5,000万円 |
6〜9% |
300〜450万円 |
| 大規模工事 |
1億円 |
4.5〜7% |
450〜700万円 |
| 超大規模工事 |
5億円 |
3〜5% |
1,500〜2,500万円 |
補正係数
実際に積算する場面では、工事する場所や工期などに応じて補正して計算します。
例えば、市街地補正があるなら共通仮設費率が1.3〜1.5倍に、山間部補正なら1.2〜1.4倍になるといった具合です。
とはいえ、自分で補正係数まで考慮して計算するのは容易ではありません。
そのため、必要に応じてツールを使用することをおすすめします。
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【工事別】共通仮設費率の算出方法|上限値・下限値とは
共通仮設費率には、許容される上限値および下限値を求める計算式があります。
これは、工期に左右されることなく、工事の規模だけで設定可能です。
計算式は以下のとおりです。
- 共通仮設費率の上限値 = a×Pc
- 共通仮設費率の下限値 = b×Pc
英字には、以下の項目を入れてください。
- a:工種別の上限値係数
- b:工種別の下限値係数
- c:工種別のパーセンテージ
- P:直接工事費
また、工事の種類ごとの共通仮設費率の上限値・下限値は、以下の表のとおりです。
| 種類 |
説明 |
直接工事費 |
共通仮設費率の適用範囲 |
| 新営建築工事 |
更地に建物を新しく建てる工事 |
1,000万円以下 |
3.25~4.33% |
| 1,000万円超 |
4.34×P^0.0313~5.78×P^0.0313 |
| 改修建築工事 |
建物を修理および修復する工事 |
500万円以下 |
3.59~6.07% |
| 500万円超 |
6.94×P^0.0774~11.74×P^0.0774 |
| 新営電気設備工事 |
新しく建てる建物に電気供給する工事 |
500万円以下 |
3.90~7.19% |
| 500万円超 |
9.08×P^0.0992~16.73×P^0.0992 |
| 改修電気設備工事 |
既存施設にある電気設備を修理および修復する工事 |
300万円以下 |
1.91~5.21% |
| 300万円超 |
3.10×P^0.0608~8.47×P^0.0608 |
| 新営機械設備工事 |
新しく機械設備を取り付ける工事 |
500万円以下 |
4.86~5.51% |
| 500万円超 |
10.94×P^0.0952~12.40×P^0.0952 |
| 改修機械設備工事 |
既存の機械を修理および修復する工事 |
300万円以下 |
1.73~4.96% |
| 300万円超 |
2.44×P^0.0433~7.02×P^0.0433 |
| 昇降機設備工事 |
エレベーターやエスカレーターなどの設備工事 |
1,000万円以下 |
3.08% |
| 1,000万円〜5億円 |
7.89×P^-0.1021で算出する |
| 5億円超 |
2.07% |
共通仮設費の計算で注意するポイント
共通仮設費の計算で注意するポイントは、以下の3つです。
- 現場の特殊条件を考慮する
- 各種補正を忘れない
- 積算基準の改定を確認する
それぞれの詳細を見ていきましょう。
現場の特殊条件を考慮する
共通仮設費を計算するとき、現場の特殊条件を見落としてしまうケースがよくみられます。
現場の特殊条件を考慮しないと、後々追加費用が発生して利益を圧迫する原因となります。
例えば、以下のような特殊条件を見逃さないように注意しましょう。
- 搬入路の制限
- 作業時間の制限
- 地下埋設物による制約
- 近隣協定による制約
各種補正を忘れない
共通仮設費の計算時には、各種補正を忘れないように注意が必要です。
主な補正項目と補正係数の目安は以下のとおりです。
| 補正項目 |
補正係数の目安 |
| 市街地 |
1.3〜1.5倍 |
| 山間部 |
1.2〜1.4倍 |
| 冬期 |
1.1〜1.3倍 |
| 夜間工事 |
1.2〜1.5倍 |
| 工期短縮 |
1.1〜1.2倍 |
標準的な条件で工事できることは珍しく、それぞれの補正を適切に組み合わせる必要があります。
積算基準の改定を確認する
積算基準が改定されているのに、古い基準を採用したまま計算をしている建設業者も少なくありません。
国土交通省が発表している「公共建築工事共通費積算基準」は定期的に改定されています。
古い基準のままにならないように、積算基準の改定も確認しましょう。
共通仮設費率の目安と計算方法を正しく把握しよう

共通仮設費は、工事を円滑に進めるために欠かせない費用です。
その適正な割合(共通仮設費率)は、工事の規模や種類、現場の立地条件によって変動します。
正確な積算を行うためには、単に標準値を当てはめるだけでなく、市街地や山間部といった「補正係数」の加味や、定期的に更新される最新の積算基準の確認が欠かせません。
これらの計算を誤ると、想定外のコスト増を招き、会社の利益を圧迫するリスクがあります。
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