建設プロジェクトを成功に導き、利益を残すために欠かせないのが「実行予算」の策定です。
どんぶり勘定での経営は、予期せぬ追加コストや赤字現場を生むリスクを孕んでいます。
しかし、「見積や積算と何が違うのか?」「具体的にどう作成すれば精度が上がるのか?」と悩む担当者も多いはずです。
そこでこの記事では、実行予算の定義や内訳といった基礎知識から、具体的な作成ステップ、精度を高めるための注意点まで徹底解説します。
現場の「利益」を可視化し、安定した会社運営を実現するためのガイドとして、ぜひご活用ください。
実行予算とは

建設業にとっての実行予算とは、それぞれの工事現場ごとに設定される予算のことです。
具体的には、資材費、人件費、諸経費などを細かく洗い出して、採算性を可視化する役割を担っています。
現場ごとに必要となる資材の量や人員が異なるため、一括りに予算の決定はできません。
そこで、工事現場ごとに予算を設定する実行予算を用います。
実行予算の主な役割
実行予算の主な役割は、以下の3つです。
- 無駄な支出を防ぐ
- 原価管理を強化できる
- 経営改善にも役立つ
作り方を確認する前に、まずは主な役割を把握しておきましょう。
無駄な支出を防ぐ
実行予算を作れば、それぞれの現場で発生する費用を高い精度で把握できます。
そのため、資材費や人件費などで過大支出があれば把握でき、無駄な費用の削減につながります。
また、各現場のデータを集めれば会社全体の工事費用も把握できるので、コストの管理もしやすくなるでしょう。
原価管理を強化できる
実行予算では、資材費や労務費、諸経費などの費用が細分化されます。
これらを週次更新することにより、それぞれの現場における最新の支出状況を把握することが可能です。
このとき、クラウド型ツールを活用すれば、現場と会社の情報共有もスムーズになり、重複発注や追加コストを抑制でき、原価管理をより強化できます。
経営改善にも役立つ
実行予算を作ると、損失や赤字も把握可能です。
例えば、資材費が予定よりもかかっているのか、人件費が圧迫しているのかなどが細かく分かります。
この損失や赤字の程度、推移をリアルタイムで確認することで、改善や対策がしやすくなります。
【実行予算】基本予算・見積・積算との違い
実行予算と似た言葉に、基本予算、見積、積算がありますが、いずれも主な目的が異なります。
| 用語 |
主な目的 |
| 実行予算 |
現場の支出を管理し、予算超過を防止する |
| 基本予算 |
プロジェクト全体の資金計画の基準を定める |
| 見積 |
顧客提示価格を設定し、採算性を担保する |
| 積算 |
図面・仕様から数量を算出し、見積精度を高める |
実行予算は、それぞれの現場の支出を即時把握し、予算を超過しないように管理するのが目的です。
一方で、基本予算や見積は目的が違うので、混同しないように注意しましょう。
実行予算を作る前に知っておきたい内訳
実行予算は、以下のような費用で構成されています。
それぞれの詳細を見ていきましょう。
材料費
材料費は、建設で使われる以下のような費用を計上します。
例えば、住宅を建てるために使われる木材の量、単価を見積もって総額を算出します。
このとき、材料の質による価格差も考慮しておくのがおすすめです。
高品質の材料は建物の耐久性を高め、コスト削減につながることがあります。
労務費
労務費には、現場作業員・大型機械オペレーターなどの人件費を含みます。
労働者の経験年数や地域の平均賃金といった条件により、労務費は異なります。
また、夜間・休日勤務が生じる場合、追加費用が発生するケースがあり、これらを細かく計上することで予算のズレを防止可能です。
外注費
外注費は、外部業者に委託する費用を指しています。
例えば、電気工事・配管工事などで専門業者を雇うケースなら、その業者の単価とスケジュールが予算に影響します。
外注費を正しく予測したい場合は、複数業者から相見積もりを取るのがおすすめです。
機械費
機械費には、以下のようなものがあります。
例えば、大型クレーンを数ヶ月間借りるケースでは、レンタル料だけではなく故障に備えた保険料や保守費も含めて予算を立てることを推奨します。
また、操作員の訓練費用の考慮も必要です。
現場経費
代表的な現場経費には、以下のようなものがあります。
| 種類 |
例 |
| 消耗品費 |
・手袋
・ヘルメット など |
| 通信費 |
・現場と会社で連絡を取るときの電話代
・インターネット利用料 など |
| 交通費 |
・現場と会社を移動するときにかかる交通費
・材料や機器を運搬するときにかかる費用 など |
消耗品は定期的に補充が必要になるため、予算にはある程度余裕を持っておくのがおすすめです。
また、交通費については、遠方の現場で宿泊費が必要になる場合はその分の予算も確保しておく必要があります。
管理費
現場監督の人件費や事務所の維持費は、管理費に該当します。
具体的には、現場監督の交通費、仮設事務所のレンタル料・光熱費などです。
また、現場の安全管理・品質管理を目的として、監視システムやソフトウェアを導入した場合は、それらの費用も予算に入れます。
その他
その他の費用としては、天候不良による工期の延長、想定外の地盤の問題による追加工事費などがあります。
また、地元住民との調整にかかる費用や、手続きにより発生する弁護士費用なども予算に組み込んでおくことをおすすめします。
これにより、急な支出にも落ち着いて対応できるでしょう。
実行予算の作り方
実行予算の作り方は、大きく4つのステップに分かれています。
- STEP1.予算を作成する人を決める
- STEP2.実行予算案を作る
- STEP3.各部署と調整・決裁をする
- STEP4.必要に応じて改善する
実行予算を作るときの参考にしてみてください。
STEP1.予算を作成する人を決める
まず、予算を作成する人を決定します。
実行予算作成者を決定することにより、責任の所在がはっきりします。
通常、現場責任者が任命されます。
もちろん義務ではないためほかの人に任せてもいいですが、予算の決定に責任を持たせる意味でも現場に直接携わる人を選ぶことを推奨します。
STEP2.実行予算案を作る
予算を作成する人が決まったら、実行予算案を作ります。
通常は、見積書の数字を組み換えて作成します。
これは、見積書の段階で枠組み、詳細が決定されていることが多いためです。
ただし、数字を組み換える際は、根拠のある現実的な数値を採用してください。
数値に客観性がない場合や非現実的な場合は、収益率の判断が難しくなってしまいます。
STEP3.各部署と調整・決裁をする
実行予算案が作れたら、各部署と調整および決裁をします。
これは、さまざまな視点で実行予算案をチェックすることで、精度の向上や情報の共有を図るためです。
また、各プロセスの責任者に実行予算案を確認させることで、当事者意識・責任感の向上にもつながります。
ぜひ工事が始まる前にチェックしてもらいましょう。
STEP4.必要に応じて改善する
最終的な決裁が終わったら終わりというわけではありません。
実際にかかった費用と実行予算を随時比べて、継続的にモニタリングしましょう。
そして、必要に応じて改善してください。
赤字の兆候に早めに気づき、対策や予算の修正を行うことが損失を最小限に抑えることにつながります。
ツールの導入がおすすめ
実行予算の作成に加えて継続的なモニタリングまで行うとなると、従来のやり方では難しいかもしれません。
そこで、ツールの導入も検討してみてください。
建設業向けの施工管理システムを採用すれば、実行予算の作成から進捗の管理、精算まで一元管理が可能です。
例えば、PayStructなら施工管理はもちろんのこと、見積、受発注、請求管理までたった一つのツールでできてしまいます。

さらに、電子帳簿保存法の改正といった法改正にも対応しています。
電子帳簿保存法に対応できていないと税務上不利になる可能性があります。
単に業務の効率化を図るためだけではなく、税務上不利になるリスクを軽減するという視点でもツールの導入はおすすめです。
実行予算を作るときに気を付けること
実行予算を作るときに気を付けることは、以下の4つです。
- 正確にデータを集める
- 精度の高い見積もりを行う
- 適切にコミュニケーションを取る
- コスト管理を継続する
適当に作ってしまっては効果的に活用できません。
ここで、実行予算を作るときに気を付けるべきことを把握しておきましょう。
正確にデータを集める
実行予算を作るときは、正確にデータを集めることを意識してみてください。
材料費・労務費・機械費などの細かいデータを集め、見積もりのベースにします。
また、正確にデータを集めるコツは、価格変動や市場にあわせてデータを定期的に更新することです。
最新のデータを反映することで、実行予算が現実的かつ実行できるものになります。
精度の高い見積もりを行う
実行予算を作るときは、過大評価・過小評価は避けなければなりません。
できる限り精度の高い見積もりを行います。
また、見積もりを行うときは、天候不良が原因の工期延長や材料費高騰といったリスクも考慮しておくことをおすすめします。
予備資金を設定しておくとよいでしょう。
適切にコミュニケーションを取る
実行予算を作るときは、関係者と適切にコミュニケーションを取ることも忘れてはいけません。
関係者が予算の内容を理解できるように、定期的な打ち合わせなどを行うのが有効です。
また、メールや議事録などをうまく活用して、履歴を残しておくと情報を共有しやすくなるのでおすすめです。
コスト管理を継続する
実行予算を作った後も、コスト管理を継続してください。
これは、予算超過を防止し、適切な資金配分をするためです。
例えば、四半期ごとの評価で異常な支出が生じていないか確認します。
無駄な支出を削り、予算を効率的に使うために、実行予算作成後もコスト管理は続けましょう。
実行予算の作り方に関するよくある質問
実行予算の作り方に関するよくある質問は、以下のとおりです。
- 実行予算は誰が作成しますか?
- 実行予算はExcelでも作れますか?
- 基本予算とは何ですか?実行予算と同じですか?
理解をより深めるためにも、一つずつ回答を見ていきましょう。
実行予算は誰が作成しますか?
実行予算は、現場責任者が作成するのが一般的です。
現場の工事原価、収益管理を行う現場責任者を選ぶのが望ましいといえます。
作成者が決まることで、責任の所在がはっきりするという利点があります。
実行予算はExcelでも作れますか?
実行予算はExcelでも作れます。
しかし、Excelは同時編集が難しいため、リアルタイムでの情報共有には向いていないという特徴があります。
そのため、Excelよりも施工管理システム・ツールを使用するのがおすすめです。
基本予算とは何ですか?実行予算と同じですか?
基本予算は、会社全体の資金配分などの判断基準となるものです。
具体的には、プロジェクトスタート前に大枠の資金計画を決定します。
一方で実行予算は、各現場ごとの支出を洗い出し、採算性を可視化するものです。
プロジェクト全体の資金計画の基準を決めるのが基本予算、現場の実際の支出を管理するのが実行予算と認識しておくとよいでしょう。
まとめ:実行予算を作って現場ごとの予算を把握しよう

実行予算は、現場の採算性を可視化し、赤字現場を出さないための「羅針盤」です。
見積書をベースに、材料費や労務費、現場経費などの内訳を現実的な数値で策定することで、無駄な支出を抑えます。
大切なのは、予算を作って終わりにせず、実行中にリアルタイムで進捗をモニタリングし続けることです。
しかし、複数の現場を抱える中で細かな管理を継続するのは容易ではありません。
業務負荷を軽減しつつ精度を高めたいなら、システム・ツールの導入も検討してみてください。
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