建設業界で利益を最大化するためには、現場の原価だけでなく、会社全体の運営コストである「販売費及び一般管理費(販管費)」の適切な把握が不可欠です。
しかし、「これは販管費に入るの?」「共通仮設費との違いは?」と判断に迷うケースも少なくありません。
そこでこの記事では、「販売費及び一般管理費(販管費)」の定義や主な勘定科目、分析するときのコツなどを分かりやすく解説します。
さらに、一人親方や中小規模の経営者が実践できる、効果的なコスト削減の具体的な工夫も紹介します。
ぜひお役立てください。
販売費及び一般管理費(販管費)とは?

販売費及び一般管理費は、本業を営むうえで必要な費用であり、販管費と呼ばれることもあります。
しかし、この販管費はほかの用語と混同しやすく、一人親方や中小規模の建設業者は勘定科目の違いに注意しなければなりません。
まずは、販売費及び一般管理費とは何か、その定義を見ていきましょう。
さらに、建設業における「完成工事原価」「現場管理費」「共通仮設費」と一般管理費との違いも紹介します。
販管費は「会社を維持・運営するための費用」
販売費及び一般管理費(販管費)は、簡単にいうと「会社を維持・運営するための費用」です。
より詳細に説明すると、販売費は会社の営業活動にかかった費用の中でも商品・サービスの販売に関して発生し、完成工事原価には含まれない売上と期間対応する間接的な費用です。
商品・サービスを売る過程で発生した販売スタッフの人件費や広告宣伝などが該当します。
一方で、一般管理費も完成工事原価に含まない間接的な費用という部分では販売費と同じですが、会社の一般的な管理業務で必要な費用のことを指しています。
例えば、会社の家賃・水道光熱費などです。
一般管理費は販売には直接関係ないものの、会社を維持するために必要な経費です。
損益計算書では販売費及び一般管理費で計上されるのが一般的ですが、両者は販売活動に関する費用か、会社全体の管理業務にかかる費用かという点で明確に異なります。
そのため、2つの区分に分かれています。
建設業における「完成工事原価」と「一般管理費」との違い
建設業における完成工事原価とは、ある会計年度内に完成した工事にかかった費用の総額のことです。
完成工事原価には、材料費や労務費、外注費などが含まれます。
建設業では、工事の進捗にあわせて完成工事原価が計上されるのが一般的です。
この完成工事原価は、完成した工事にかかった費用の総額であり、会社全体の維持・運営にかかる費用である一般管理費とはまるで意味が異なります。
とはいえ、どちらも把握しておくべき費用です。
完成工事原価を適切に把握しておけば、正確な利益計算・適切な価格設定が可能となります。
建設業における「現場管理費」と「一般管理費」との違い
建設業における現場管理費は、工事現場の管理・運営にかかる費用のことです。
例えば、以下のような費用は現場管理費に該当します。
- 現場監督や現場事務員の給与
- 工事中の建物に対する保険料
- 防音対策費用・補償費用 など
一方で、一般管理費は会社全体の維持・運営にかかる費用です。
特定の工事現場で発生する費用なのか、会社全体の運営にかかる費用なのかという点で両者は異なるため、混同しないように注意しましょう。
建設業における「共通仮設費」と「一般管理費」との違い
建設業における共通仮設費は、仮設物・仮設作業に関連する費用を指しています。
例えば、以下の費用は共通仮設費に該当します。
- 現場の調査費
- 仮設事務所・倉庫の建設、解体にかかる費用
- 仮囲い・工事用道路などの設置費用
- 現場周辺のゴミの清掃費 など
共通仮設費は、特定の工事現場における仮設施設あるいは作業に関連する費用です。
会社全体の運営に関わる費用を指す一般管理費とは明らかに異なることが分かるでしょう。
【一覧表】販管費に含まれる主な勘定科目
販売費及び一般管理費に含まれる主な勘定科目を確認しましょう。
それぞれ分けて一覧表にまとめましたので、参考にしてみてください。
販売費:案件獲得のためにかかる費用
販売費の主な勘定科目は、以下の表のとおりです。
| 勘定科目 |
例 |
| 広告宣伝費 |
・広告費
・チラシ印刷代 など |
| 販売手数料 |
・委託業者への手数料
・販売代理店への手数料 など |
| 荷造運賃 |
商品運送にかかる費用 |
| 販売促進費 |
キャンペーンにかかる費用 |
| 接待交際費 |
・接待費用
・関係者との食事代 など |
| 旅費交通費 |
・取引先への移動費
・営業活動に必要な出張費 など |
表を確認すると、さまざまな費用が販売費に該当することが分かるでしょう。
ただし、販売費に該当するからといって、何も考えずにどんどん計上してしまうのは危険です。
販売費が増えるとその分利益が少なくなるため、経営を圧迫します。
一般管理費:会社全体の管理にかかる費用
一般管理費の主な勘定科目は、以下の表のとおりです。
| 勘定科目 |
例 |
| 役員報酬 |
役員への報酬 |
| 給与賃金 |
本社勤務の従業員の給料・賞与 など |
| 雑給 |
本社勤務のアルバイトへの給料・賞与 など |
| 法定福利費 |
上記の給与に対する以下の金額
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険 など |
| 福利厚生費 |
・健康診断費(従業員)
・慶弔費(従業員) など |
| 修繕費 |
・事務所のメンテナンス費
・機械のメンテナンス費 など |
| 水道光熱費 |
・ガス代
・電気代
・水道代 など |
| 地代家賃 |
・事務所の家賃
・事務所の駐車場代 など |
| 消耗品費 |
・工具(少額)
・器具(少額) など |
| 旅費交通費 |
・通勤手当代
・出張費 など |
| 通信費 |
・電話代
・インターネット代 など |
| 租税公課 |
・印紙代
・固定資産税 など |
| 保険料 |
会社が所有しているものの損害保険料 など |
| 車両費 |
・ガソリン代
・車両のメンテナンス費 など |
| リース料 |
コピー機などのリース費用 |
| 新聞図書費 |
・書籍
・新聞 |
| 諸会費 |
・組合費
・商工会費 |
| 支払手数料 |
銀行への振込手数料 など |
| 減価償却費 |
減価償却資産の当期費用計上分 |
こちらも販売費同様、金額が大きくなれば利益を圧迫します。
そのため、経営に支障が出ないようにうまくコントロールしたいところです。
人件費には要注意
人件費は、売上原価に該当することがあります。
事務所で働く方は会社全体の維持・管理が仕事なので、その方の給料については一般管理費です。
基本的に建設業の人件費については3種類に分類することができ、それぞれ下表の区分となります。
| 内容 |
例 |
| 完成工事原価に含まれる人件費 |
工事作業員の給与 |
| 現場管理費に含まれる人件費 |
現場監督等、直接工事するわけではないが現場で間接的に工事に携わる人の給与 |
| 一般管理費に含まれる人件費 |
本社勤務(事務作業者や営業担当の方等)の人の給与 |
上述の通り、人件費はその内容によって売上原価とするか一般管理費とするかの扱いが異なってくるので、注意が必要です。
判断に迷う場合は、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
販売費及び一般管理費の分析方法
販売費及び一般管理費は、経営の状態や経営効率を分析する重要な指標です。
例えば、売上に対して販売費及び一般管理費が占める割合が低ければ低いほど、経費効率は良いと判断できます。
ただし、この経費効率を把握するためには2つの指標を覚えておく必要があります。
以下で、詳細を確認しましょう。
販売費比率
経費効率を把握するために覚えておきたい指標の1つ目は、販売費比率です。
売上高に対し、販売費がどれくらい発生しているのかを表す指標です。
求める場合は、以下の計算式を使いましょう。
この比率を算出することで、売上を得るのにかかった費用の効率性を評価できるようになります。
例えば、販売費比率が低いと、少額の販売費でより多くの売上を得られたと評価できます。
少額の販売費で効率よく売上を得られているかを確認したい場合は、販売費比率にも目を向けてみてください。
販売管理費比率
経費効率を把握するために覚えておきたい指標の2つ目は、販売管理費比率です。
売上高に対し、どの程度販売費及び一般管理費が発生したのかを示す指標です。
求める場合は、以下の計算式を使ってください。
- 販売管理費比率(%)=販売費及び一般管理費÷売上高×100
もし、販売費比率が一定なのに販売管理費比率が大きくなっている場合は、一般管理費が増加していると推測できます。
このように、販売費比率と比べることで、固定費といった一般管理費の支出の状況を把握できるのが特徴です。
販売管理費比率を分析するときのコツ
ここからは、販売管理費比率を分析するときのコツを紹介します。
- 過去のデータと比べる
- 同業他社と数値を比較する
- コストパフォーマンスも考慮する
単に数値を求めるだけではしっかりと分析できたとはいえません。
コツを押さえて、本当の意味で分析できたといえるようになりましょう。
過去のデータと比べる
販売管理費比率が算出できたら、ぜひ過去のデータと比べてみてください。
過去の数値からどのように変化しているのか分析すると、今後の方向性を定めやすくなります。
例えば、販売管理費比率が大きくなっているときは、販管費の支出が増加したか、売上が減った可能性があると推測できます。
このように過去のデータからの変化をチェックし、経営に役立てましょう。
同業他社と数値を比較する
販売管理費比率を算出したのなら、同業他社と数値を比べるのもおすすめです。
同業他社と比べることで、自社の目標とするべき販売管理費比率の目安を知ることができます。
例えば、中小企業庁が発表した「中小企業実態基本調査 令和6年確報(令和5年度決算実績)」によると、建設業の販売管理費比率は19.85%でした。
全建設業者がこの数値を鵜呑みにすればいいというわけではありませんが、目安の一つにはなるでしょう。
コストパフォーマンスも考慮する
販売管理費比率を分析する際は、コストパフォーマンスも考慮することをおすすめします。
例えば、販売費及び一般管理費の中で、広告宣伝費を戦略費と捉えることもできます。
その場合、多少販売管理費比率が上昇しても効果が発揮されていれば、むしろプラスに働くかもしれません。
そのため、販売管理費比率を小さくすることを目指すのもいいですが、コストパフォーマンスの部分も考慮するようにしましょう。
一人親方・小規模経営者が実践できる販管費削減の工夫
一人親方・小規模経営者が実践できる販管費削減の工夫は、以下の5つです。
- 役員報酬を見直す
- 賃料・光熱費などを見直す
- 販促費を見直す
- 旅費交通費を見直す
- 人件費を見直す
それぞれの詳細を見ていきましょう。
役員報酬を見直す
販管費の削減を考えるなら、経営状況にあった役員報酬なのか見直す必要があります。
加えて、役員の数が適切かどうかもチェックすることをおすすめします。
会社の売上・利益が少ないのに役員報酬が高額だと、会社の資金が不足し倒産につながるリスクがあります。
ただし、役員報酬の期中の変動は役員報酬が損金不算入となる税務リスクが生じるため、期首から3月以内に決定し、その期が終了するまでは変更できないことに留意が必要です。
賃料・光熱費などを見直す
賃料・光熱費は仕方ない費用だと考える方もいるかもしれませんが、売上に対して負担が大きすぎる場合は見直すのがおすすめです。
固定費は毎月かかる費用であり、一度削減できればその効果は継続します。
例えば、賃料を1万円削減できれば、1年で12万円、それ以降も毎月マイナス1万円は続きます。
このとき、金額の大きい固定費から見直すと効率よく費用を削減可能です。
販促費を見直す
その広告は本当に効果を発揮していますか?
実際、費用対効果を確認しないまま広告宣伝を別の会社に委託しているケースも少なくありません。
広告などの販促費は販管費を圧迫する原因になることもあるため、不要な販促費は削減したほうがよいでしょう。
まずは販促費がどの程度かかっていて、どのくらいの効果を生んでいるのかしっかりと見直すことをおすすめします。
旅費交通費を見直す
移動・出張が多い場合は、旅費交通費を見直すことで販管費を抑えられる可能性があります。
例えば、以下のような工夫が費用の削減につながります。
- 高速道路は現金支払いより安いカード決済でETCを利用する
- 出張で利用する新幹線は早割で購入する など
抑えられる旅費交通費がないか今一度確認してみてください。
人件費を見直す
販管費の削減を考えるなら、人件費は無視できません。
これは、しばしば販管費の中で人件費が高い割合を示すからです。
具体的には、以下のような方法があります。
- 勤怠管理システムを導入して人件費の適正化を図る
- 請求管理システムを導入して作業にかかる時間を減らす など
ただし、人件費は働くモチベーションにも関わります。
そのため、闇雲に削るという行為は避けましょう。
人件費については、より慎重な判断が必要です。
販売費及び一般管理費に関するよくある質問
販売費及び一般管理費に関するよくある質問は、以下のとおりです。
- 現場監督の給与は販管費ですか?
- 決算書で「販売費及び一般管理費」はどこに記載されていますか?
- 赤字でも販管費は計上すべきですか?
理解をより深めるためにも、一つずつ回答を見ていきましょう。
現場監督の給与は販管費ですか?
現場監督の給与は、原則工事原価(現場管理費)に含まれます。
例えば、現場監督者に50万円の給与を支払うと仕訳は以下のとおりとなります。
| 借方 |
貸方 |
| 労務費(間接労務費) |
500,000円 |
普通預金 |
500,000円 |
労務費は工事原価の大部分を占めており、経営に大きな影響を与えます。
事務所で働く方の給料などが販管費に該当します。
決算書で「販売費及び一般管理費」はどこに記載されていますか?
決算書で「販売費及び一般管理費」は、損益計算書に記載されます。
損益計算書には、まず売上高が記載されており、その下に売上原価が位置しています。
そして、販売費及び一般管理費は売上総利益の下です。

赤字でも販管費は計上すべきですか?
赤字でも販管費は計上したほうがよいでしょう。
会計のルールに基づいて、その期に発生した費用を正しく反映させ、適正な決算書(損益計算書)を作成する必要があるからです。
もし赤字の原因が販管費の使いすぎ(コスト過多)にある場合、計上しないと正確な損益が把握できず、経営改善の手が打てなくなります。
まとめ:販売費及び一般管理費を正しく把握しよう

建設業における販売費及び一般管理費(販管費)は、単なる「経費」ではなく、会社の経営状態を映し出す鏡です。
完成工事原価や現場管理費との違いを明確に理解し、適切に計上・分析することで、自社の収益構造を正確に把握できます。
特に一人親方・小規模経営では、人件費や固定費の見直しがダイレクトに利益改善につながる可能性があります。
まずは販売管理費比率をチェックし、過去のデータと比較することから始めてみましょう。
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