業務の属人化や法制度への対応など、建設業の中小企業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
こうした課題を解決する手段として注目されているのが「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」です。
DXは大企業だけの取り組みと思われがちですが、実は中小零細の建設業も十分に効果を実感できます。
むしろ、2023年10月のインボイス制度、2024年1月の電子帳簿保存法改正を考慮すると、中小建設業こそ取り組むべき手段といえます。
そこでこの記事では、DXの基礎から導入メリット、具体的な進め方、補助金情報までを網羅的に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは

DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、デジタル技術を用いて業務や組織、ビジネスモデルを変革する取り組みのことです。
具体的には、業務の効率化や経営戦略のスピードアップを実現します。
さらに、競争力の強化や新たな価値創出にもつながります。
建設業でいえば、請求書や支払い管理、勤怠管理など、アナログのまま残りやすい分野をデジタルで一元管理すれば、確認や承認にかかる時間を大幅に短縮できます。
DXは中小企業が抱える構造的な課題を解決する有効な手段であり、後回しにすればするほど業務を大きく改善する機会を逃している可能性があります。
なぜ中小企業こそDXなのか
経済産業省が発表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』で、2025年以降の経済損失が最大12兆円/年(2018年の3倍)と論じられたことにより、DXは注目を集めることになりました。
これは、大きな経済的損失という課題を解決する方法がDXだと言及されたからです。
とはいえ、中小企業にDXがすぐに浸透することはありませんでした。
しかし、近年、政府がデジタル社会の実現に向けて動いており、さまざまな法制度がデジタル対応前提で改正されています。
「まだこれからだから大丈夫」という段階ではなくなりつつあるのです。
政府も動き出しているこのデジタル化の流れを無視すると、コンプライアンス面でもリスクを伴う可能性があります。
最悪の場合、罰則を受ける可能性もゼロではありません。
単に業務の効率化だけではなくコンプライアンスの強化を図るためにも、中小企業こそ今DX化を進める必要があります。
DX推進で中小建設業が得られるメリット
DX推進で中小建設業が得られるメリットは、以下のとおりです。
- ミスが減る
- データの一元管理で検索性が向上する
- 法改正に対応しやすくなる
それぞれの詳細を確認しましょう。
ミスが減る
DX化を進めれば、手作業と比較してミスが大幅に減ることが予想されます。
たとえば、インボイス制度導入前であれば、これまで通り手作業で請求書を作成していてもよかったかもしれません。
しかし、インボイス制度の導入により請求書の形式が厳格化された現在、手作業や簡単なExcelでの管理ではミスが起こりやすくなります。
その点、DX化によりインボイス制度に対応した請求書作成ツールを導入すれば、ツールが自動で計算等をしてくれるため、大きなミスはなくなります。
さらに、手作業時よりも作業時間は短縮するでしょう。
データの一元管理で検索性が向上する
DX化のもう一つのメリットは、データの一元管理ができるようになることでしょう。
たとえば、クラウド型のドキュメント管理システムを導入すれば、書類はすべてデジタル化、かつ一箇所で管理できるようになるため、検索性が向上します。
デスクの引き出しを探して、倉庫を探してといったことをしていたら、いくら時間があっても足りません。
必要な書類を数秒で見つけられるのは非常に大きなメリットで、顧客対応へのスピードも大幅に向上します。
法改正に対応しやすくなる
「なぜ中小企業こそDXなのか」でもお伝えしましたが、政府はデジタル社会の実現に向けて動いており、各法制度がデジタル対応前提で改正されているという現状があります。
この現状を無視していると、法改正にスムーズに対応できず、最悪の場合罰則を受ける可能性もあります。
たとえば、電子帳簿保存法に対応せず違反した場合は、以下のような罰則を科せられるかもしれません。
- 青色申告の取り消し
- 重加算税10%の課税
- 100万円以下の罰金 など
とはいえ、手作業・簡単なExcelで帳票管理などをしている場合、法改正に対応するのは容易ではありません。
その点、DX化により法改正にも対応している管理ツールを導入していれば、法改正にもスムーズに対応可能です。
しかも、手作業などの場合とは異なり、手間はほとんどかからないでしょう。
知らなかったでは済まされないところまできています。
DX化を実践し、法改正にもしっかりと対応していきましょう。
中小建設業がDXを進めやすい業務
中小建設業の場合、以下のような業務からDXを進めるとよいでしょう。
- 定型作業が多い業務
- データ入力・集計が多い業務
- 情報共有が多い業務
「DX化を考えているけど、何から手をつけていいかわからない」という方は、この3つの中からスタートしてみてください。
定型作業が多い業務
中小建設業は、限られた人数でさまざまな業務をこなすことを求められることが多く、定型作業にかなりの時間を取られるケースがあります。
そこで、定型作業をシステムに任せてみましょう。
請求書の処理や勤怠管理といった定型業務はルールが決まっていて繰り返し行われるという特徴がありますが、この特徴は自動化しやすいのです。
定型業務を自動化することで、働いている方は重要な作業に集中できます。
その結果、会社の生産性は大きく向上するでしょう。
データ入力・集計が多い業務
中小企業では、以下のような業務が発生します。
このようなデータ入力・集計が多い業務もDX化を進めるとよいでしょう。
データ入力や集計が多い業務は手作業だと時間がかかるだけではなく、ミスも発生しやすくなります。
そこで、システムの出番です。
時間の大幅な削減だけではなく、計算ミスなども生じなくなるので、業務効率は大きく改善することが見込まれます。
情報共有が多い業務
適切に情報共有が行われていないと業務の属人化を招くことになります。
たとえば、ある社員が辞めたらその業務についてわかるものがおらず、かなりの時間を浪費したというケースも珍しくありません。
さらに、現場と事務所で意思疎通がスムーズに行われていなかった結果、工事が赤字になることもあります。
情報共有は、健全な経営において非常に重要な役割を担っています。
そこで、DX化により効率化させましょう。
DX化の一環でコミュニケーションツールを導入すれば、組織全体の連携強化や迅速な意思決定にもつながります。
中小建設業がDXを進める方法
中小建設業がDXを進める方法は、以下のとおりです。
- STEP1.DXの目的・目標を明確化する
- STEP2.自社に最適なツールを選ぶ
- STEP3.社員の理解・協力を得る
- STEP4.実際に導入する
これからDXを進めようと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
STEP1.DXの目的・目標を明確化する
最初に、DXの目的・目標を明確化しましょう。
間違えてはならないのが、DXはあくまでも手段であり、ゴールではないということです。
たとえば、以下のような目標を設定します。
- 業務効率の改善による残業時間の減少
- 顧客満足度向上による売上の上昇
- 単純作業の負担軽減によるコア業務への人的リソースの再配置 など
なぜDXに取り組むのか、DXを進めることで何を達成したいのかを考えてみてください。
STEP2.自社に最適なツールを選ぶ
目的・目標が定まったら、自社に最適なツールを選びます。
ここで注意してほしいのが、単に高いツールを選ばないということです。
高額なツールは、たしかにさまざまな機能があり魅力的に感じるかもしれませんが、実は自社には必要な機能は限られており、コストパフォーマンスが悪い可能性があります。
自社の解決したい課題をピックアップし、コストパフォーマンスの高いツールを選びましょう。
「高いから品質もいいだろう」「人気だから便利だろう」という理由で選ぶのはおすすめできません。
STEP3.社員の理解・協力を得る
DXの推進は、社員の理解と協力が欠かせません。
社員が疑問や不信感を抱いていては、スムーズにDX化が進まないどころか、頓挫してしまう可能性もあります。
そこで、なぜDXが必要なのかはもちろんのこと、DXの推進で社員にどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明しましょう。
また、社員の声を聞くことでDX化がより良い方向に進みます。
実際に使用するのは社員です。
DXを成功させるためにも、社員からの声を積極的に聞いてみてください。
STEP4.実際に導入する
実際に導入するときにおすすめなのは、小さく始めることです。
たとえば、部署単位で始めて、成果を実感できたら徐々に対象を広げていきます。
いきなり大規模な変革をするのが悪いわけではありませんが、コストも時間もかかりますし、何より従業員の負担が大きくなる可能性があります。
導入する際は、小さい範囲から始めるとよいでしょう。
以下の記事では、中小企業がDXを進めるための実践的な方法を解説しています。
あわせてご覧ください。
中小企業DX入門|総務・事務の書類対応を効率化する実践ガイド
中小企業のDXは補助金が使えることがある
中小企業のDXは、補助金が使えることがあるのをご存じでしょうか?
国や自治体の補助金制度を活用することで、初期費用を抑えながらDX化を進められます。
ここでは、国・自治体の補助金制度に加え、補助金申請のポイントについても解説していきます。
国の補助金制度

国が提供する代表的な補助金制度には、以下のようなものがあります。
- デジタル化・AI導入補助金(2026年・令和8年度・通常枠)
- ものづくり補助金(2025年・製品・サービス高付加価値化枠)
- 小規模事業者持続化補助金(2025年・一般型・通常枠) など
デジタル化・AI導入補助金(2026年・令和8年度・通常枠)は、ソフトウェアの導入・クラウドサービスの利用開始に特化した補助金で、補助率は2分の1、上限額は450万円です。
会計ソフトや顧客管理システムなど、事務作業効率化に寄与するツールを導入する際に活用を検討してみましょう。
一方、ものづくり補助金(2025年・製品・サービス高付加価値化枠)は設備投資を伴うデジタル化が対象です。
補助率は2分の1から3分の2、上限額は2,500万円です。
また、小規模事業者持続化補助金(2025年・一般型・通常枠)は従業員20名以下の事業者が適用可能で、補助率は原則3分の2、上限額は原則50万円です。
上記以外にも、国が実施している補助金制度はあります。
DX化を進めるにあたってコストを抑えたいと考えている場合は、公式サイトなどをしっかりと確認しましょう。
自治体の補助金制度
国だけではなく、自治体も独自の補助金制度を実施しています。
たとえば、東京都のデジタルトランスフォーメーション推進支援事業(2025年・DX戦略策定支援コース)は補助率3分の2、かつ上限3,000万円で、中小企業のDX化を支援しています。
大阪府や神奈川県でも似たような補助金制度があり、うまく活用すればDX化の費用を抑えられるでしょう。
ただし、それぞれ補助率や上限額は異なるため、活用する前に公式サイトなどで条件を確認しておくことをおすすめします。
補助金申請のポイント

補助金を申請する際は、まず申請要件の詳細を比較しましょう。
申請の要件は制度ごとに異なるため、自社の状況とマッチするかをあらかじめ確認します。
次に、審査基準を比較してみてください。
たとえば、労働生産性の向上効果が重視されるものもあれば、経営計画の妥当性・実現可能性が大きく評価されるものもあります。
審査基準を比較し、把握しておくことで、その制度により適した申請書を作成できるでしょう。
また、申請時期・スケジュールの把握も欠かせません。
補助金制度はそれぞれ申請期限やスケジュールが異なります。
そのため、申請する制度のスケジュールを把握しておかないと、いつの間にか申請期限が過ぎていたということになりかねません。
申請漏れを防ぐためにも、早めに行動することをおすすめします。
以下の記事では、中小企業DX向けの補助金の選び方について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
中小企業DX補助金の選び方完全ガイド!総務事務の効率化を実現
まとめ:中小建設業こそDXは必須

建設業の中小企業を取り巻く業務の属人化や法制度への対応といった課題を解決する手段として、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が注目されています。
たとえば、請求・勤怠管理など定型業務のDX化によりミスが大きく減るほか、データの一元管理で検索性は向上し、情報共有もしやすくなるでしょう。
また、法改正に対応しているツールを導入すれば、都度発生する法改正への対応もスムーズに行えます。
ただし、いきなり大きく始めるのではなく、小さく始めることが成功のポイントです。
また、補助金を活用すればコストを抑えた導入も可能です。
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