建設業経理DX完全チェックリスト｜請求書・報告書業務を効率化

2025年6月24日中小企業のDXに関する記事

また今月も現場からの請求書の束を見て頭を抱えていませんか？手書きの工事日報、FAXで送られてくる材料費の請求書、現場ごとに異なるフォーマットの経費精算書。これらを一つずつ確認して会計システムに入力し、工事原価を集計する作業に追われる毎日。月末になると各現場の数字が合わず、深夜まで原因を探し回る。そんな建設業の経理担当者特有の悩みを抱えている方は少なくないでしょう。実際、建設業界の経理担当者の82％が「現場との情報連携」に課題を感じており、月間60時間以上を手作業による数字の照合に費やしているという調査結果もあります。しかし、建設業に特化したDXソリューションを活用することで、これらの課題は確実に解決できます。今回は、建設業の経理担当者が今すぐ実践できるDXチェックリストをご紹介します。

現状把握チェックリスト：まずは課題を明確化する

建設業のDXを成功させるためには、まず現在の業務状況を正確に把握し、具体的な課題を明確にすることが重要です。以下のチェックリストを使って、自社の現状を客観的に評価してみましょう。

書類処理の現状確認項目

現場からの日報や作業報告書はどのような形式で提出されているか確認する
請求書や領収書の受領から会計システム入力までの平均所要時間を測定する
月末の工事原価集計にかかる時間と人員を記録する
各現場で使用している書類フォーマットの種類と違いを整理する
現場監督との情報共有頻度と連絡手段を把握する
材料費や外注費の承認フローと承認にかかる時間を確認する
過去6か月間で発生した数字の不整合やエラーの件数を集計する
現場写真や図面などの資料保管方法と検索性を評価する

コストと時間の定量化項目

1件の請求書処理にかかる平均時間を計測する
月次決算作業の総工数を部門別に算出する
現場との連絡調整にかかる時間コストを算出する
書類の郵送費や印刷費などの間接コストを集計する
エラー修正や再作業にかかる時間的コストを計算する
税理士や会計事務所への資料準備時間を測定する
年次決算時の追加作業時間と残業代を算出する

現状把握は感覚ではなく、具体的な数値に基づいて行うことで、改善効果を正確に予測できる

システム環境整備チェックリスト：DX導入の基盤を作る

建設業のDXを効果的に進めるためには、適切なシステム環境の整備が不可欠です。現場とオフィスをつなぐデジタル基盤を構築するための準備項目を確認しましょう。

インフラ整備の確認項目

オフィスのインターネット回線速度と安定性を測定する
各現場でのモバイル通信環境を調査する
既存のパソコンやタブレットの台数と性能を確認する
クラウドサービス利用に必要なセキュリティ対策を整備する
データバックアップの仕組みと頻度を確認する
現場で使用可能な防塵・防水仕様の端末を検討する
Wi-Fi環境が整っていない現場での通信手段を準備する
複数拠点間でのデータ共有方法を設計する

セキュリティ対策の実施項目

パスワード管理システムを導入し、強固なパスワードを設定する
二段階認証が可能なサービスを優先的に選択する
従業員向けセキュリティ研修を定期的に実施する
ウイルス対策ソフトを全端末に導入し、定期更新を行う
機密情報へのアクセス権限を適切に設定する
外部からのアクセスログを定期的に監視する
データ漏洩時の対応手順を文書化する

建設業特化ツール選定チェックリスト：最適なシステムを見つける

建設業界には特有の商慣習や法規制があるため、業界に特化したツールの選定が成功の鍵となります。以下の項目を参考に、自社に最適なシステムを選択しましょう。

会計・原価管理システムの選定項目

工事別原価管理機能が充実しているか確認する
現場からの直接入力機能があるか検証する
既存の会計ソフトとの連携可能性を調査する
建設業会計基準に対応しているか確認する
完成工事高と未成工事支出金の管理機能を評価する
工事進行基準での売上計上に対応しているか確認する
月次・四半期・年次での工事収支報告書作成機能を確認する
税理士事務所との連携機能があるか調査する

現場管理システムの選定項目

現場写真の自動整理・分類機能があるか確認する
工程管理と連動した作業報告機能を評価する
材料発注と在庫管理の連携機能を確認する
安全書類の自動作成機能があるか検証する
協力会社との情報共有機能を評価する
図面管理と変更履歴の追跡機能を確認する
天候記録と作業実績の関連付け機能を検証する
労務管理と連動した勤怠記録機能を評価する

コスト・機能比較の評価項目

初期導入費用と月額利用料金を詳細に比較する
ユーザー数による料金体系を確認する
無料試用期間の有無と期間を調査する
導入支援サービスの内容と費用を確認する
カスタマイズ可能な範囲と追加費用を調査する
他システムとの連携にかかる費用を確認する
サポート体制と対応時間を評価する

建設業特化システムの選定では、機能の豊富さよりも自社の業務フローとの適合性を重視する

段階的導入実行チェックリスト：確実に成果を出す

システム選定が完了したら、段階的な導入により確実に成果を出していきます。一度にすべてを変更するのではなく、小さな成功を積み重ねることが重要です。

第1段階：基本機能導入の実行項目

最も効果が期待できる業務から導入を開始する
パイロット現場を1〜2箇所選定して試験導入する
現場監督と経理担当者の合同研修を実施する
従来の方法と並行運用しながら検証を行う
日次・週次での効果測定と課題抽出を実施する
現場からのフィードバックを定期的に収集する
操作マニュアルと業務フローを文書化する
問題発生時の対応手順を整備する

第2段階：機能拡張の実行項目

パイロット導入の成果を全社に報告する
対象現場を段階的に拡大していく
高度な機能の活用方法を習得する
他部門との連携機能を順次導入する
データ分析機能を活用した経営レポートを作成する
協力会社への利用拡大を検討する
運用ルールの見直しと最適化を実施する
新入社員向けの教育プログラムを整備する

第3段階：全社展開の実行項目

全現場での本格運用を開始する
従来システムからの完全移行を実施する
経営陣向けのダッシュボード機能を活用する
予算管理と実績管理の連携を強化する
外部システムとの連携を拡大する
継続的改善の仕組みを構築する
成功事例を業界内で共有する
次期システム更新の計画を立案する

効果測定・改善チェックリスト：成果を最大化する

DX導入の効果を継続的に測定し、改善を重ねることで、投資対効果を最大化できます。定期的な評価と改善のサイクルを確立しましょう。

定量的効果の測定項目

請求書処理時間の短縮率を月次で測定する
現場報告書の作成・提出時間を比較する
月次決算作業の工数削減効果を算出する
エラー発生件数と修正時間の減少を記録する
印刷費・郵送費などの経費削減効果を集計する
残業時間の削減による人件費効果を算出する
税理士費用や外部委託費の変化を確認する
資料作成時間の短縮による生産性向上を測定する

定性的効果の評価項目

従業員の業務満足度を定期的にアンケート調査する
現場監督からの情報共有に関する評価を収集する
顧客からの支払いや請求に関する評価を確認する
協力会社との連携改善効果を評価する
経営陣の意思決定スピード向上を確認する
新人教育の効率化効果を評価する
業務の属人化解消効果を確認する
情報セキュリティの向上効果を評価する

継続改善の実行項目

月次での効果レビュー会議を開催する
現場からの改善要望を定期的に収集する
新機能やアップデートの活用を検討する
業務フローの見直しと最適化を継続する
他社の成功事例を研究し、自社に応用する
システムの利用率向上策を実施する
ROIの改善目標を設定し、進捗を管理する
次期システム更新に向けた要件を整理する

建設業のDXは導入して終わりではなく、継続的な改善により真の効果を実現できる

トラブル対応チェックリスト：問題を予防し迅速に解決する

DX導入過程では様々な問題が発生する可能性があります。事前に対応策を準備し、問題が発生した際に迅速に解決できる体制を整えておきましょう。

システムトラブル対応項目

システム障害時の代替手段を事前に準備する
データバックアップからの復旧手順を文書化する
ベンダーサポートへの連絡方法と手順を明確化する
緊急時の意思決定者と連絡先を明確にする
現場での通信障害時の対応手順を整備する
定期的なシステムメンテナンス計画を策定する
セキュリティインシデント対応手順を整備する
システム更新時のテスト手順を確立する

運用トラブル対応項目

従業員の操作ミスによるエラー対応手順を整備する
データ入力間違いの発見と修正方法を確立する
権限設定ミスによるアクセス問題の解決手順を準備する
新入社員や異動者への緊急教育体制を整備する
現場からの操作質問に対する迅速回答体制を構築する
システム利用率低下時の原因分析と対策手順を準備する
業務フロー変更時の関係者への周知方法を確立する
法制度変更に伴うシステム対応手順を整備する

建設業の経理担当者にとって、DXは単なる効率化ツールではなく、業務の質を根本的に向上させる重要な取り組みです。このチェックリストを活用して、確実に成果の出るDX導入を実現してください。一つずつ着実に進めることで、必ず現在の課題は解決され、より戦略的で価値の高い業務に集中できる環境が実現されるはずです。

※本記事は2025年6月時点の情報と事例を基に構成しています。
すべての企業に当てはまるものではありません。導入の際は自社の状況を踏まえご判断ください。

一覧へ