「税理士から電子帳簿保存法の対応を急ぐよう言われたが、何から始めればいいのか分からない」「請求書や契約書を電子化したいが、建設業法との関係がよく分からない」「工事ごとに大量の書類があるが、全部電子保存しなければいけないのか」「システム導入にいくらかかるのか不安」
建設業の経理担当者や経営者から、このような声が数多く寄せられています。2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行され、2024年1月からは電子取引データの電子保存が完全義務化されました。特に建設業では、契約書、請求書、工事関連書類など膨大な量の書類を扱うため、適切な対応が急務となっています。
しかし実際には、「法律が複雑で理解できない」「どのシステムを選べばいいか分からない」「建設業特有の書類をどう扱えばいいのか不明」といった理由で、対応が遅れている企業が少なくありません。
本記事では、建設業に特化した電子帳簿保存法の対応方法を、基礎知識から実務手順、システム選定、成功事例まで、実践的かつ分かりやすく解説します。国税専門官として電子帳簿保存法に従事した税理士監修のもと、建設業の現場で本当に役立つ情報をお届けします。
電子帳簿保存法とは?建設業が押さえるべき基礎知識

電子帳簿保存法は建設業にとって避けて通れない法律となりました。
しかし、その内容は複雑で、特に建設業特有の事情を考慮すると、どこから手をつけていいか分からないという声が多く聞かれます。
ここでは、建設業の経営者や経理担当者が最低限知っておくべき基礎知識を、実務に即した形で解説します。
電子帳簿保存法の目的と背景
電子帳簿保存法は、1998年に制定された法律で、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存することを認める制度です。
従来は紙での保存が原則でしたが、IT技術の発展に伴い、電子データでの保存を可能にすることで、企業の事務負担軽減とペーパーレス化を促進することが目的とされています。
2022年1月の改正では、要件が大幅に緩和される一方で、電子取引データの電子保存が義務化されました。
そして2024年1月からは、2年間の猶予期間が終了し、完全義務化がスタートしています。
これにより、メールで受け取った請求書やPDFの契約書などを、紙に印刷して保存することは原則として認められなくなりました。
建設業においては、この法改正が特に大きな影響を及ぼしています。
なぜなら、建設業では工事ごとに契約書、注文書、請求書、領収書、施工記録、検査記録など、膨大な量の書類を扱うからです。
ある中堅建設会社では、年間約8000件もの書類を取り扱っており、これらすべてを適切に電子保存し、必要な時に速やかに検索・提示できる体制を整えることが求められています。
2024年完全義務化で何が変わったのか
2024年1月からの完全義務化により、建設業の実務にどのような影響が出ているのでしょうか。
最も大きな変化は、電子取引データを紙で保存することが原則として認められなくなったことです。
具体的には、メールで受領した請求書のPDFファイル、クラウド上でやり取りした契約書、EDI取引のデータなどは、電子データのまま保存しなければなりません。
これらを印刷して紙で保管するだけでは、法律上の要件を満たさないのです。
例えば、協力会社からメールで送られてくる月次の請求書を、これまで通り印刷してファイリングしているだけでは、法律違反となってしまいます。
元請業者から工事の発注データをウェブシステム経由で受け取った場合も、そのデータを適切に保存する必要があります。
さらに重要なのが、保存方法に関する要件です。
単にフォルダに保存しておけばいいというわけではなく、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。
真実性の確保とは、データが改ざんされていないことを証明できる措置のことで、タイムスタンプの付与や訂正削除の履歴が残るシステムの利用などが求められます。
可視性の確保とは、税務調査の際に速やかにデータを検索・表示できる状態にしておくことで、取引年月日、取引金額、取引先名称などで検索できる機能が必要です。
建設業では、元請業者と下請業者の間で日常的に大量の電子データがやり取りされています。
請求書、注文書、検収書、施工図面、工事写真など、その種類も多岐にわたります。これらすべてについて、法律の要件を満たした保存体制を構築することが求められているのです。
違反した場合のペナルティ
電子帳簿保存法に違反した場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか。
最も直接的な影響は、税務調査での不利益です。
電子取引データを適切に保存していない場合、その取引に関する証拠能力が否定される可能性があります。
結果として、経費として認められなかったり、仕入税額控除が否認されたりするリスクがあります。
建設業では材料費や外注費など多額の経費が発生するため、これらが否認されると税負担が大幅に増加してしまいます。
さらに、青色申告の承認取消というペナルティもあります。
青色申告には様々な税制上の優遇措置がありますが、帳簿書類を適切に保存していないと判断されれば、これらの優遇を受けられなくなる可能性があるのです。
建設業では、工事進行基準による収益認識や、工事損失引当金の計上など、青色申告の特典を活用している企業が多いため、承認取消の影響は甚大です。
また、重加算税の対象となるリスクもあります。
意図的に電子データを削除・改ざんしたと認定されれば、本来の税額に加えて35%から40%の重加算税が課される可能性があります。
建設業においては、建設業許可の更新時にも影響が出る可能性があります。
建設業法では帳簿書類の保存義務が定められており、これを適切に履行していないと判断されれば、許可更新に支障をきたす恐れがあります。
建設業許可は事業継続の生命線ですから、このリスクは絶対に避けなければなりません。
こうしたリスクを避けるためにも、適切な対応が不可欠なのです。
建設業における電子帳簿保存法の適用範囲

建設業では、一般的な商取引とは異なる特殊な書類が数多く存在します。
工事契約書、施工図面、検査記録、安全管理書類など、建設業特有の書類も電子帳簿保存法の対象となるため、どの書類がどのように適用されるのかを正確に理解することが重要です。
ここでは、建設業における電子帳簿保存法の適用範囲を具体的に解説します。
建設業で対象となる書類の種類
建設業において電子帳簿保存法の対象となる書類は、大きく分けて「帳簿」「書類」「電子取引データ」の3つに分類されます。
まず帳簿については、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳などが該当します。建設業では特に工事台帳が重要で、工事ごとの売上、原価、利益を管理する帳簿として、電子帳簿保存の対象となります。
工事台帳には、受注金額、実行予算、発注実績、出来高、原価集計など、工事管理に必要な情報がすべて記録されているため、これを電子化することで経営判断の迅速化にもつながります。
書類については、契約書、注文書、納品書、請求書、領収書などの取引関係書類が対象です。
建設業では、これに加えて工事請負契約書、下請契約書、注文請書、検収書、出来高証明書なども含まれます。さらに、決算関係書類として貸借対照表、損益計算書、棚卸表なども対象です。
電子取引データは、2024年から完全義務化された最も重要な分類です。
メールで受信した請求書のPDFファイル、クラウドサービス上でやり取りした契約書、EDI取引のデータ、インターネットバンキングの取引明細などが該当します。
建設業では、元請業者とのウェブシステムを通じた受発注データ、協力会社から送られてくる見積書や請求書のメール添付ファイル、工事写真のデジタルデータなども、電子取引データとして適切に保存する必要があります。
建設業特有の書類と注意点
建設業には、他の業種にはない特有の書類が数多く存在します。これらについても、電子帳簿保存法の対象となるため、適切な対応が必要です。
工事関連書類としては、施工図面、工事写真、施工計画書、安全管理書類、品質管理書類、工事日報、作業日報などがあります。
これらは工事の進捗管理や品質保証のために不可欠な書類であり、建設業法や建築基準法でも保存が義務付けられているものが多くあります。
特に工事写真は、工事の各段階で撮影が義務付けられており、竣工後も長期間保存する必要があるため、データ量が膨大になりやすい点に注意が必要です。
下請関係書類も重要です。
建設業法では、下請契約に関する書類の作成と保存が義務付けられています。具体的には、下請基本契約書、個別工事の注文書と注文請書、支払通知書、検収書などです。
これらの書類を電子保存する場合、建設業法の要件と電子帳簿保存法の要件の両方を満たす必要があります。下請代金の支払いに関する書類は、下請法の観点からも適切な保存が求められるため、特に慎重な対応が必要です。
許可・届出関係書類も見逃せません。建設業許可申請書、経営事項審査申請書、工事経歴書などは、行政機関への提出書類として控えを保存する義務があります。
これらを電子データで作成・提出した場合、そのデータも適切に保存する必要があります。
特に注意が必要なのは、これらの建設業特有の書類が、電子帳簿保存法だけでなく、建設業法、建築基準法、労働安全衛生法など、複数の法律によって保存義務が課されている点です。
各法律で定められた保存期間や保存方法を確認し、最も厳しい要件を満たすように対応することが重要です。
電子化できる書類・できない書類
電子帳簿保存法では、多くの書類が電子化可能ですが、一部には原本の保存が必要な書類も存在します。
建設業においてどの書類が電子化可能で、どの書類が紙での保存が必要なのかを理解することが重要です。
電子化が可能な書類としては、一般的な取引書類のほとんどが該当します。請求書、領収書、契約書、注文書、納品書などは、要件を満たせば電子データでの保存が認められます。
建設業特有の書類でも、工事請負契約書、下請契約書、注文請書、出来高証明書などは電子化可能です。
ただし、電子化する際には注意点があります。紙で受領した書類をスキャンして電子保存する場合(スキャナ保存)は、解像度200dpi以上、カラー画像での保存という技術的要件を満たす必要があります。
また、タイムスタンプの付与や、スキャン作業を行った担当者の記録など、一定の手続きが求められます。2022年の法改正でこれらの要件は緩和されましたが、依然として一定のルールは守る必要があります。
一方、原本保存が推奨される書類もあります。
法律上は電子化可能でも、実務上は紙での保存が望ましいケースがあるのです。
例えば、金額が特に大きい工事の請負契約書や、紛争の可能性がある契約書などは、念のため紙の原本も保管しておく方が安全です。
万が一の訴訟時には、紙の原本の方が証拠能力が高いとされるケースもあります。
また、不動産登記に必要な書類や、官公庁への提出が必要な書類の中には、原本の提出が求められるものもあります。
建築確認申請書類や、労働基準監督署への届出書類などは、行政機関が電子申請を受け付けていない場合、紙の原本が必要です。
こうした書類については、電子データと紙の原本の両方を保管するハイブリッド方式を採用する企業も多くあります。
建設業法との関係:保存すべき書類と保存期間
建設業において電子帳簿保存法に対応する際、もう一つ重要な法律が建設業法です。
建設業法でも帳簿・書類の保存義務が定められており、電子帳簿保存法と建設業法の両方の要件を満たす必要があります。
ここでは、両法律の関係性と、実務上どのように対応すべきかを解説します。
建設業法で定められた帳簿・書類の保存義務
電子帳簿保存法に対応する際、建設業では建設業法で定められた保存義務も同時に考慮する必要があります。
建設業法第40条の3では、建設業者に対して帳簿の備付けと書類の保存を義務付けています。
建設業法で保存が義務付けられている主な帳簿・書類は以下の通りです。
まず、営業に関する帳簿として、工事ごとの請負契約の内容、請負代金の額、着工時期と完成時期などを記録した帳簿の作成が求められます。
これは一般的に「工事台帳」と呼ばれるもので、工事別の売上、原価、利益を管理する建設業の基幹帳簿です。
工事台帳には、発注者名、工事名称、工事場所、契約金額、着工年月日、完成年月日、主任技術者または監理技術者の氏名などを記載する必要があります。
工事に関する書類としては、発注者との請負契約に関する書類、下請契約に関する書類、注文書と注文請書、請求書と領収書などの保存が義務付けられています。
特に下請契約については、下請代金の支払い状況を明確にする書類の保存が厳格に求められています。建設業法第19条の3では、元請負人は下請負人に対する支払いに関する書類を作成し、保存することが義務付けられており、これに違反すると営業停止などの行政処分の対象となる可能性があります。
さらに、建設業許可に関する書類として、建設業許可申請書、経営事項審査申請書、毎事業年度終了後に提出する工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額などの書類も保存する必要があります。
これらは建設業許可の更新時や、経営事項審査の際に必要となるため、確実に保存しておくことが重要です。
保存期間の違いと注意点
電子帳簿保存法と建設業法では、書類の保存期間が異なる場合があります。
この違いを理解し、より長い保存期間に合わせて対応することが重要です。
電子帳簿保存法では、国税の帳簿書類の保存期間は原則として7年間です。
ただし、欠損金が発生した事業年度については10年間の保存が必要です。これは法人税法に基づく規定で、欠損金の繰越控除を受けるために必要な期間となっています。
一方、建設業法では、帳簿は5年間、工事に関する書類は請負契約が完了した日から5年間の保存が義務付けられています。
ただし、この「完了」とは工事の引き渡しを意味するため、着工から完成まで数年かかる大型工事の場合、実質的な保存期間はさらに長くなります。
例えば、2020年に着工し2023年に完成した工事の場合、書類の保存期間は2023年から5年間、つまり2028年まで保存する必要があります。
実務上は、電子帳簿保存法の7年間と建設業法の5年間を比較し、長い方の期間に合わせて保存することが推奨されます。
つまり、ほとんどの書類は7年間保存しておけば、両方の法律の要件を満たすことができます。ただし、欠損金が発生した年度については10年間の保存が必要ですし、場合によってはそれ以上の期間保存しておく方が安全なケースもあります。
特に建設業では、工事完成後に瑕疵が発見されるケースもあり、その場合は完成から何年も経ってから紛争になることがあります。
民法上の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間や、建物の種類によって異なる保証期間なども考慮すると、重要な工事の書類は法定期間よりも長く保存しておくことが望ましいでしょう。
両法律を満たす実務的な対応方法
電子帳簿保存法と建設業法の両方を満たすためには、どのような対応が必要でしょうか。
実務的な観点から、効率的な対応方法を解説します。
まず重要なのは、書類の分類と管理方法の統一です。
電子帳簿保存法では「取引年月日、取引金額、取引先」での検索が要件とされていますが、建設業ではこれに加えて「工事名」「工事番号」での検索も必要です。
したがって、ファイル名やフォルダ構成を工夫し、両方の法律の要件を満たす形で整理することが重要です。
例えば、ファイル名を「20250115_工事番号12345_株式会社○○建設_請求書_1500000円.pdf」のように、日付、工事番号、取引先、書類種別、金額を含める命名規則を設定すれば、どちらの法律の検索要件も満たすことができます。
次に、電子帳簿保存法の「真実性の確保」要件を満たすため、タイムスタンプの付与または訂正削除履歴が残るシステムの利用が必要です。
建設業では、工事の進行に伴って書類が頻繁に発生するため、できるだけ自動でタイムスタンプが付与されるシステムを選ぶことで、業務効率を維持しながら法的要件を満たすことができます。
また、建設業法で求められる帳簿記載事項と、電子帳簿保存法で求められる記録事項を統合し、一つのシステムで管理できるようにすることも重要です。
工事台帳システムと会計システム、電子帳簿保存システムがバラバラになっていると、二重入力の手間が発生し、データの不整合も起きやすくなります。
建設業に特化したDXプラットフォームであるペイストラクトは、こうした建設業特有の要件に対応しており、電子帳簿保存法と建設業法の両方の要件を満たしながら、工事管理から経理処理、請求管理までを一元化できる点が特徴です。
電子帳簿保存法の3つの区分と要件
電子帳簿保存法は、保存する書類の種類や方法によって、大きく3つの区分に分かれています。
それぞれに異なる要件が定められているため、建設業の実務においてどの区分がどの書類に適用されるのかを正確に理解することが重要です。
ここでは、3つの区分とその要件について、建設業の具体例を交えながら詳しく解説します。
区分①:電子帳簿等保存(自社で最初から電子的に作成した帳簿・書類)
電子帳簿等保存は、自社で会計ソフトなどを使って最初から電子的に作成した帳簿や書類を、そのまま電子データで保存する方法です。
建設業では、会計ソフトで作成する仕訳帳や総勘定元帳、工事管理システムで作成する工事台帳などが該当します。
この区分の特徴は、要件を満たせば税制上の優遇措置を受けられる点です。
優良な電子帳簿として国税庁の基準を満たした場合、過少申告加算税が軽減される制度があります。
ただし、この優遇を受けるためには、訂正削除履歴が残る仕組みや、帳簿間の相互関連性が確認できることなど、一定の要件を満たす必要があります。
建設業の実務では、工事台帳を電子的に作成している企業が多いでしょう。
この工事台帳を電子帳簿として保存する場合、単にパソコンに保存しておくだけでなく、訂正や削除の履歴が記録されるシステムを使用することで、より高い信頼性を確保できます。
また、工事台帳と会計帳簿が連動していることで、工事別の損益が正確に把握でき、経営判断にも役立ちます。
ただし、この区分の電子保存は任意であり、紙で出力して保存することも認められています。
したがって、まずは次に説明する「電子取引データ保存」から対応を始め、余裕があればこの区分にも取り組むという段階的なアプローチも有効です。
区分②:スキャナ保存(紙で受領・作成した書類を電子化して保存)
スキャナ保存は、取引先から紙で受け取った請求書や領収書、自社で紙で作成した書類などを、スキャナやスマホで読み取って電子データとして保存する方法です。
建設業では、協力会社から紙で受け取る請求書や、現場で作成される手書きの日報などが対象となります。
この区分には、一定の技術的要件と手続き要件があります。2022年の法改正で要件は大幅に緩和されましたが、依然として以下のような要件を満たす必要があります。
技術的要件としては、解像度200dpi以上での読み取り、カラー画像での保存が原則です。
ただし、領収書や請求書などの重要書類については、金額や日付が明瞭に読み取れることが重要です。
また、スキャン後のデータにタイムスタンプを付与するか、訂正削除履歴が残るシステムを使用する必要があります。
手続き要件としては、受領してから速やかにスキャンすること、スキャン担当者を明確にすることなどが求められます。
ただし、2022年の改正で「受領後3日以内」という厳しい期限は撤廃され、「速やかに」という表現に緩和されました。実務上は、1週間から2週間程度でスキャンすれば問題ないとされています。
建設業の現場では、紙の書類がまだ多く使われています。協力会社の中には、請求書を紙でしか発行してくれないところもあるでしょう。
そうした紙の書類を効率的に電子化するには、スキャナ保存の仕組みを整えることが重要です。
最近では、スマホのカメラで撮影するだけでタイムスタンプが自動付与されるアプリもあり、現場でも手軽に対応できるようになっています。
区分③:電子取引データ保存(電子的にやり取りした取引情報の保存)
電子取引データ保存は、2024年から完全義務化された最も重要な区分です。メールで受け取った請求書のPDFファイル、ウェブサイトからダウンロードした領収書、クラウド上でやり取りした契約書など、電子的にやり取りした取引情報を、電子データのまま保存することが義務付けられています。
この区分の重要なポイントは、「紙に印刷して保存する」ことが原則として認められなくなったことです。
従来は、電子データを受け取った場合でも紙に印刷して保管すれば良かったのですが、2024年1月以降はこの方法が認められません。
電子データは電子データのまま、法律の要件を満たした形で保存する必要があるのです。
建設業の実務では、以下のようなデータが電子取引データに該当します。
元請業者とのウェブシステムを通じた受発注データ。大手ゼネコンの多くは、協力会社とのやり取りを専用のウェブシステムで行っています。
このシステムで受け取った注文データや、提出した請求データは、すべて電子取引データとして保存が必要です。
メールで受け取る請求書や見積書のPDFファイル。
協力会社から「今月の請求書を送ります」とメールに添付されてくるPDFファイルは、電子取引データです。
これを印刷してファイリングするだけでは要件を満たしません。
インターネットバンキングの取引明細。銀行の取引明細をウェブ上で確認し、PDFでダウンロードしている場合、そのPDFデータも電子取引データとして保存が必要です。
クラウド上の電子契約サービスで締結した契約書。最近増えている電子契約サービスで締結した工事請負契約書なども、電子取引データに該当します。
これらのデータを保存する際には、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。
真実性の確保とは、データが改ざんされていないことを証明できる措置のことで、以下のいずれかの方法を選択します。
タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う。データのやり取りの段階でタイムスタンプが付与されているシステムを使う方法です。
取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付す。受け取ったデータに、自社でタイムスタンプを付与する方法です。
訂正削除の記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムで保存する。クラウドストレージなどで、誰がいつデータを修正・削除したかの履歴が残るシステムを使う方法です。
訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、守る。自社で規程を作成し、データの改ざん防止のルールを定めて運用する方法です。これは最もコストがかからない方法で、中小企業に適しています。
可視性の確保とは、税務調査の際に速やかにデータを検索・表示できる状態にしておくことです。
具体的には、取引年月日、取引金額、取引先名称で検索できる機能が必要です。
建設業では、これに加えて工事名や工事番号でも検索できるようにしておくと、実務上非常に便利です。
建設業の実務:具体的な対応手順
電子帳簿保存法の理論は理解できても、実際にどのように対応を進めればいいのか分からないという声が多く聞かれます。
ここでは、建設業の実務に即した具体的な対応手順を、段階的に解説します。小規模な建設会社でも無理なく実践できる現実的なアプローチをご紹介します。
ステップ1:現状把握と対象書類の整理(準備期間:1〜2週間)
まず最初に行うべきは、自社で扱っている書類の現状を正確に把握することです。
どんな書類が、どのような形で、どれくらいの量発生しているのかを調査します。
書類の種類の洗い出しとして、契約書(工事請負契約書、下請契約書など)、注文書・注文請書、請求書・領収書、工事関連書類(施工図面、工事写真、日報など)、その他の取引書類をリストアップします。
それぞれの書類について、現在の授受方法を確認します。
紙で受け取っているのか、メールで受け取っているのか、ウェブシステムでやり取りしているのかを明確にします。
特に重要なのは、電子的にやり取りしている書類の特定です。これらは電子取引データとして、2024年から完全義務化の対象となっているからです。
月間・年間の発生件数も把握します。
請求書は月何件、契約書は年何件といった形で、おおよその件数を記録しておくことで、後のシステム選定時の参考になります。
現在の保存方法と保存場所も確認します。
紙の書類はどこに保管しているか、電子データはどのフォルダに保存しているか、バックアップは取っているかなども確認しておきましょう。
ステップ2:優先順位の設定と対応計画の策定(準備期間:1週間)
現状把握ができたら、次は優先順位を設定し、どの書類から対応していくかの計画を立てます。
すべての書類を一度に電子化しようとすると、業務が混乱してしまうため、段階的なアプローチが重要です。
最優先で対応すべきは、電子取引データです。
なぜなら、これは2024年から完全義務化されており、対応しないと法律違反になるからです。
具体的には、メールで受け取る請求書のPDF、ウェブシステムでやり取りする受発注データ、インターネットバンキングの取引明細などが該当します。
次に対応すべきは、発生頻度が高い書類です。毎月大量に発生する請求書や領収書は、スキャナ保存の仕組みを整えることで、大幅な業務効率化が期待できます。
最後に、重要度の高い書類の電子化を検討します。契約書や工事台帳など、長期保存が必要で検索頻度も高い書類は、電子化することで管理が格段に楽になります。
対応スケジュールとしては、第1段階(1〜3か月)で電子取引データの最低限対応、第2段階(4〜6か月)で請求書などのスキャナ保存開始、第3段階(7〜12か月)で全書類の電子化完了という流れが現実的です。
ステップ3:システムの選定と導入(準備期間:1〜2か月)
対応計画が決まったら、次はシステムの選定です。
電子帳簿保存法に対応するためには、単なるファイル保存ではなく、法律の要件を満たした専用のシステムが必要です。
システム選定のポイントとして、まず電子帳簿保存法の要件を完全に満たしているかを確認します。
タイムスタンプ機能、検索機能、訂正削除履歴の記録機能などが備わっているかをチェックします。JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の認証を取得している製品であれば、法律の要件を満たしていることが保証されます。
次に、建設業特有の業務に対応しているかも重要です。
工事別の書類管理ができるか、大容量の図面や写真を扱えるか、現場からスマホで入力できるかなどを確認します。
既存システムとの連携性も見逃せません。現在使っている会計ソフトや工事管理システムとデータ連携ができれば、二重入力の手間が省けます。
建設業に特化したDXプラットフォームであるペイストラクトは、電子帳簿保存法の要件を完全に満たしながら、見積作成から施工管理、請求・入金管理まで、建設業務の全プロセスを一元管理できる点が特徴です。
工事ごとの書類管理も容易で、現場からスマホでデータ入力もできるため、建設業の実務に即したシステムと言えます。
システムの導入においては、まず、一度お問い合わせください。
画面が使いやすいか、必要な機能が揃っているか、サポート体制は充実しているかを実際に試してから、本格導入を決定しましょう。
ステップ4:社内ルールの整備と従業員教育(準備期間:2〜4週間)
システムが決まったら、社内のルールを整備し、従業員への教育を行います。
どんなに良いシステムを導入しても、従業員が正しく使わなければ意味がありません。
まず、事務処理規程を作成します。これは、電子取引データの保存方法、訂正削除の防止措置、定期的なバックアップの方法などを定めた社内ルールです。
国税庁のウェブサイトにサンプルが公開されているので、それを参考に自社の実情に合わせて作成します。
次に、ファイル名の命名規則を統一します。例えば、「20250115_工事番号12345_株式会社○○建設_請求書_1500000円.pdf」のように、日付、工事番号、取引先、書類種別、金額を含める規則を設定します。
これにより、後から検索しやすくなります。
フォルダ構成も統一しましょう。年度別、工事別、取引先別など、自社に合った分類方法を決めて、すべての従業員が同じルールで保存できるようにします。
従業員教育では、なぜ電子帳簿保存法への対応が必要なのか、対応しないとどんなリスクがあるのかを丁寧に説明することが重要です。
その上で、具体的な操作方法を実演しながら教えます。
特に現場の職人や、パソコン操作に不慣れな従業員に対しては、丁寧な指導が必要です。スマホでの写真撮影やデータ入力など、できるだけ簡単な操作から始め、徐々に慣れてもらうようにしましょう。
ステップ5:運用開始と継続的な改善(実施期間:継続的)
準備が整ったら、実際の運用を開始します。ただし、いきなり全面的に切り替えるのではなく、一部の書類や一部の現場から試験的に始めることをお勧めします。
運用開始当初は、従来の紙での保存と並行して電子保存も行う「並行運用期間」を設けると安全です。1〜2か月の並行運用を経て、問題がないことを確認してから、完全に電子化に移行します。
運用開始後も、定期的に見直しと改善を行うことが重要です。月に1回程度、経理担当者や現場責任者を集めて振り返りミーティングを開催し、運用上の問題点や改善要望を収集します。
よくある問題としては、「ファイル名の付け方が統一されていない」「保存場所がバラバラで見つけにくい」「スキャンの画質が悪くて文字が読めない」といったことが挙げられます。
こうした問題を早期に発見し、ルールの見直しや追加教育を行うことで、運用の質を高めていきます。
また、税務調査に備えた練習も定期的に行いましょう。「○○工事の請求書を見せてください」と言われたときに、何秒で提示できるかを測定し、目標時間(例えば30秒以内)を設定して、スムーズに対応できるようにしておきます。
システム選定のポイントと比較
電子帳簿保存法に対応するためには、適切なシステムの選定が不可欠です。
しかし、市場には数多くのシステムがあり、どれを選べばいいのか迷ってしまうでしょう。ここでは、建設業に適したシステムの選定ポイントと、主要なシステムの比較を行います。
建設業に適したシステムの選定基準
建設業が電子帳簿保存法対応システムを選ぶ際には、一般的な要件に加えて、建設業特有の要件も考慮する必要があります。
まず第一に、電子帳簿保存法の要件を完全に満たしていることは当然の前提です。タイムスタンプ機能、検索機能、訂正削除履歴の記録機能などが備わっているか、JIIMAの認証を取得しているかを確認します。
建設業特有の要件としては、工事別の書類管理機能が重要です。建設業では、工事ごとに契約書、請求書、施工記録などを管理する必要があるため、工事番号や工事名で書類を分類・検索できる機能が不可欠です。
大容量ファイルへの対応も見逃せません。建設業では、施工図面や工事写真など、サイズの大きいファイルを日常的に扱います。1ファイルあたり数十MB、場合によっては数百MBの図面データをストレスなく保存・閲覧できるシステムを選ぶ必要があります。
モバイル対応も重要な選定基準です。現場監督や職人が、現場からスマホやタブレットでデータを入力したり、書類を確認したりできることで、業務効率が大幅に向上します。
既存システムとの連携性も確認すべきポイントです。現在使っている会計ソフト、工事管理システム、給与システムなどとデータ連携ができれば、二重入力の手間が省けます。API連携が可能かどうかを確認しましょう。
サポート体制の充実度も重要です。導入時の設定支援、操作研修、運用開始後のトラブル対応など、手厚いサポートが受けられるかを確認します。特に初めて電子帳簿保存に取り組む企業では、電話やチャットでいつでも質問できる体制があると安心です。
主要なシステムの比較
建設業向けの電子帳簿保存法対応システムとして、いくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
**ペイストラクト(PayStruct)**は、建設業に特化したオールインワン型DXプラットフォームです。電子帳簿保存法の要件を完全に満たしながら、見積作成から受発注、施工管理、請求・入金管理まで、建設業務の全プロセスを一元管理できます。
特に優れているのが、工事ごとの書類管理機能です。工事台帳と連動して、各工事に関連する契約書、請求書、施工記録などが自動的に紐付けられ、工事番号で一括検索できます。現場からスマホで工事写真をアップロードすると、自動的にタイムスタンプが付与され、工事ごとのフォルダに分類されます。
建設業法で求められる帳簿記載事項にも完全対応しており、工事台帳の自動作成、下請代金支払い状況の管理、建設業許可更新時の書類作成など、建設業特有の業務を効率化できます。
料金体系は、初期費用30万円から80万円程度、月額利用料3万円から8万円程度と、中小規模の建設会社でも導入しやすい価格設定です。クラウド型のため、サーバー管理の手間もかからず、法改正時のアップデートも自動で行われます。
他の選択肢としては、ANDPADやPhotoructionなどの施工管理アプリに、電子帳簿保存機能が追加されているものもあります。
ただし、これらは主に現場管理に特化しており、経理処理や請求管理の機能は限定的です。
既に施工管理アプリを使っている企業が、そこに電子帳簿保存機能を追加する形での導入に適しています。
汎用の電子帳簿保存専用システムもありますが、建設業特有の工事別管理には対応していないため、建設業の実務にはやや不向きです。
会計ソフトの電子帳簿保存オプションを利用する方法もあります。弥生会計やfreeeなどの会計ソフトには、電子帳簿保存機能がオプションで用意されています。
既に使っている会計ソフトがあれば、追加コストを抑えて導入できる点がメリットです。
ただし、工事管理や現場との連携機能はないため、別途工事管理システムが必要になります。
コストパフォーマンスの考え方
システム選定で迷う大きな要因の一つが、コストです。
しかし、単に初期費用や月額費用だけで判断するのではなく、トータルコストと得られる効果を総合的に評価することが重要です。
初期費用としては、システム導入費、初期設定費、データ移行費、研修費などがかかります。
ペイストラクトの場合、これらを合わせて50万円から100万円程度が標準的です。
月額費用は、システム利用料とサポート費用です。ペイストラクトの場合は月額5万円程度から利用でき、ユーザー数に応じて変動する料金体系が一般的です。
一方、削減効果としては、書類検索時間の短縮、保管スペースの削減、税務調査対応時間の短縮、紙代・印刷代の削減などが挙げられます。
ある中規模建設会社の例では、書類検索時間が平均15分から2分に短縮され、年間約180時間の削減効果がありました。
これを時給換算すると、年間約54万円の人件費削減です。
保管スペースの削減効果も大きく、従来は倉庫を借りて紙の書類を保管していた企業が、電子化により倉庫が不要になり、年間約30万円の賃料を削減できたケースもあります。
こうした削減効果を考慮すると、多くの企業で1年から2年程度で投資を回収できる計算になります。
さらに、業務効率化による従業員の満足度向上、経営判断の迅速化といった定性的な効果も考慮すれば、コストパフォーマンスは非常に高いと言えるでしょう。
よくある質問と回答
電子帳簿保存法への対応について、建設業の経営者や経理担当者から寄せられる質問は多岐にわたります。ここでは、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. すでに紙で保存している過去の書類も電子化しなければいけませんか?
A. いいえ、過去の書類を遡って電子化する義務はありません。電子帳簿保存法は、新たに受領・作成する書類について適用されます。
ただし、過去の書類を電子化することで、保管スペースの削減や検索の効率化といったメリットがあります。余裕があれば、重要な契約書や頻繁に参照する書類から、徐々に電子化していくことをお勧めします。
なお、法律で定められた保存期間(建設業法では5年間、税法では7年間)を経過した書類は、廃棄しても問題ありません。電子化の際に、保存期間を過ぎた古い書類は廃棄することで、作業量を減らすことができます。
Q2. タイムスタンプは必ず必要ですか?費用が心配です
A. タイムスタンプは必須ではありません。電子帳簿保存法では、真実性の確保のために4つの方法が認められており、タイムスタンプはそのうちの一つです。
中小企業に最も適しているのは、「訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて守る」という方法です。これは国税庁のウェブサイトにサンプルが公開されており、それを参考に自社の規程を作成すれば、追加コストなしで要件を満たすことができます。
ただし、タイムスタンプには「いつそのデータが存在していたか」を客観的に証明できるという強みがあります。大規模な工事や、紛争の可能性がある案件の書類については、タイムスタンプを付与しておく方が安全です。
ペイストラクトのような建設業特化システムでは、タイムスタンプ機能が標準で含まれており、追加費用なしで利用できることが多いため、コストを気にせず活用できます。
Q3. 協力会社が紙の請求書しか発行してくれません。どうすればいいですか?
A. 紙で受け取った請求書は、スキャナ保存の要件を満たせば電子化できます。
複合機やスキャナで読み取り、解像度200dpi以上のカラー画像で保存します。スマホのカメラで撮影する方法も認められていますが、文字が明瞭に読み取れる画質であることが必要です。
スキャン後は、速やかにタイムスタンプを付与するか、訂正削除履歴が残るシステムに保存します。ペイストラクトなど、スマホで撮影すると自動的にタイムスタンプが付与されるアプリを使えば、手間をかけずに要件を満たせます。
なお、協力会社に対して電子請求書の発行を依頼することも検討してください。最近では、無料で電子請求書を作成できるサービスも増えており、協力会社の負担も以前より少なくなっています。お互いに業務効率が向上するため、前向きに検討してもらえる可能性があります。
Q4. 工事写真も電子帳簿保存法の対象ですか?
A. 工事写真が取引の証拠書類として使われる場合は、対象となります。
例えば、出来高請求の根拠として工事写真を元請業者に提出する場合、その写真は取引の証拠書類として扱われるため、電子帳簿保存法の要件を満たした保存が必要です。
一方、単なる施工記録として内部で保管するだけの写真は、電子帳簿保存法の対象外ですが、建設業法や建築基準法で保存が義務付けられている場合があります。
工事写真は、撮影した時点でデジタルデータなので、「電子取引データ」ではなく「自社で作成した電子データ」として扱われます。したがって、タイムスタンプは必須ではありませんが、改ざん防止の観点からは、撮影と同時に自動でタイムスタンプが付与されるシステムを使う方が安全です。
Q5. 税務調査で電子データを見せるときはどうすればいいですか?
A. 税務調査の際は、調査官の求めに応じて、速やかにデータを検索・表示できるようにしておく必要があります。
具体的には、調査官が「令和6年3月分の○○工務店への請求書を見せてください」と言ったとき、取引年月日、取引先名称、金額などの条件で検索し、該当するデータを画面に表示したり、印刷して提出したりします。
ペイストラクトのような電子帳簿保存対応システムを使っていれば、こうした検索機能が標準で備わっているため、調査官の要求にスムーズに対応できます。
なお、調査官がデータのダウンロードを求める場合もあります。その際は、CSV形式やPDF形式でデータを出力できるようにしておくことが推奨されます。
日頃から、「税務調査が来たらどう対応するか」をシミュレーションしておくと、いざという時に慌てずに済みます。経理担当者だけでなく、社長や現場責任者にも、電子データの保存場所や検索方法を共有しておくことが重要です。
Q6. 従業員が高齢でパソコン操作が苦手です。対応できるでしょうか?
A. パソコン操作が苦手な従業員でも対応できるよう、できるだけ簡単なシステムと運用方法を選ぶことが重要です。
スマホやタブレットで操作できるシステムを選べば、パソコンより直感的に使えます。特に、写真を撮るだけで自動的に保存・分類されるような機能があると、高齢の従業員でも抵抗なく使えます。
また、すべての従業員がすべての操作をできる必要はありません。現場の職人は写真撮影だけ、事務員はスキャン作業だけ、といったように、それぞれができる範囲で役割分担することで、無理なく対応できます。
導入時には、丁寧な研修と継続的なサポートが欠かせません。マニュアルを作成し、分からないことがあればすぐに聞ける体制を整えることで、徐々に慣れてもらうことができます。
Q7. 電子帳簿保存法に対応しないとどうなりますか?
A. 2024年1月から電子取引データの電子保存は完全義務化されているため、対応しないと法律違反となります。
具体的なペナルティとしては、税務調査で経費が否認されるリスク、青色申告の承認取消、重加算税の対象となる可能性などがあります。建設業では、建設業許可の更新にも影響する恐れがあります。
「まだ税務調査が来ていないから大丈夫」と考えるのは危険です。税務調査はいつ来るか分かりませんし、来てから慌てて対応しても手遅れです。
早めに対応することで、法令遵守だけでなく、業務効率化や競争力強化といったメリットも得られます。リスク回避とチャンス獲得の両面から、早期の対応をお勧めします。
まとめ:建設業の電子帳簿保存法対応ロードマップ
電子帳簿保存法への対応は、建設業にとって避けて通れない課題となりました。
しかし、適切な準備と計画的な対応により、法令遵守だけでなく、業務効率化や競争力強化といった大きなメリットを得ることができます。
AI技術を活用した自動仕訳や、工事原価のリアルタイム把握、経営ダッシュボードの構築など、より高度な活用に取り組みます。
こうしたデジタル化により、業務効率が向上するだけでなく、正確な経営数値に基づく迅速な意思決定が可能になり、企業の競争力が大幅に強化されます。
ペイストラクトは建設業のDXを一元管理のツールです。
ぜひ一度お気軽にご相談ください。