建設業の事務・経理担当者にとって、電子帳簿保存法への対応は避けて通れない 課題になっています。
1つの工事だけでも請負契約書・見積書・発注書・請求書・ 領収書・工事完成図書など数百枚の書類が行き交う建設業界では、他業種以上に 法対応の影響が大きく、何をどう保存すればいいのか判断に迷う担当者も少なく ありません。
本記事では、建設業における電子帳簿保存法の基本から対象書類・保存要件・ 実務対応のポイントまで、まとめて解説します
なお、関連記事として「建設業の請求書電子化完全ガイド【2025年最新版FAQ】」も合わせてご覧ください。
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電子帳簿保存法とは?建設業との関係について

電子帳簿保存法は、税法上の保存が義務付けられている帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。
1998年に制定され、2022年1月に大幅改正、2024年1月1日から電子取引データの保存が完全義務化されました。
建設業は取引量が多く、元請け・下請けの重層構造により書類のやり取りが複雑です。
メール添付のPDF請求書、EDI取引データ、クラウド経由の契約書など、電子で授受する書類はすべて電子帳簿保存法の対象となります。
電子帳簿保存法の3つの保存区分と建設業の対象書類

電子帳簿保存法では、書類の保存方法を3つの区分に分けています。
① 電子帳簿等保存(任意)
会計ソフトやパソコンで電子的に作成した書類をデータのまま保存する方法です。
手書きで作成したものや、取引相手が作成して紙で渡された書類は対象外です。
建設業での主な対象書類は、仕訳帳・総勘定元帳・経費帳・売上帳・仕入帳などの国税関係帳簿、損益計算書・貸借対照表などの決算関係書類、自社で電子作成した
見積書・請求書・納品書の控えなどです。
② スキャナ保存(任意)
紙で受け取った書類をスキャナやスマートフォンで撮影して電子保存する方法です。
建設業では下請け業者から紙で受け取る請求書・注文書・見積書・領収書・検収書などがこの区分の対象になります。
2022年改正でスキャナ保存の要件が大幅に緩和され、タイムスタンプの付与期間が「2か月以内+おおむね7営業日以内」に延長、検索要件も「日付・金額・取引先」の3項目に簡素化されました。
また、訂正・削除の履歴が確認できるクラウドシステムを使用する場合はタイムスタンプ自体が不要になっています。
③ 電子取引データ保存(義務)
メール添付のPDF、クラウドサービス経由、EDI取引など、電子で授受した書類をデータのまま保存することです。
この区分だけがすべての事業者に義務付けられており、2024年1月1日から完全義務化されています。
建設業で電子取引に該当する主な書類は、メール添付の請求書・見積書・注文書、EDIシステムで授受した取引データ、電子契約サービスで締結した請負契約書、
クラウドサービスからダウンロードした領収書などです。
従来のように印刷して紙で保存する方法は、原則として認められません。
電子帳簿保存法と建設業法の保存期間の違い

建設業が他業種と異なる重要なポイントとして、電子帳簿保存法と建設業法では保存期間と起算点が異なる点があります。
電子帳簿保存法では、事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間の保存義務が定められています。
一方、建設業法では、工事目的物の引渡し時から5年間(住宅の新築工事については10年間)の保存が義務付けられています。
つまり、同じ書類であっても電子帳簿保存法と建設業法のそれぞれの保存期間を確認し、長い方の期間に合わせて保存する必要があります。
特に住宅新築工事の書類は10年保存が求められるため、データの長期保管に対応したシステムの選定が重要です。
建設業企業が電子帳簿保存法に対応するメリット
では、そもそも電子帳簿保存法に対応するメリットについて解説をしていきます。
印紙税の削減
建設業は1件あたりの請負金額が大きいため、契約書に貼付する収入印紙の負担も高くなりがちです。
電子契約に切り替えることで印紙税が不要になり、年間数十万円規模のコスト削減につながるケースもあります。
書類管理の効率化と省スペース
電子帳簿保存法で7〜10年の保存義務がある書類を紙で管理するには、膨大なファイルスペースが必要です。
電子データ化することでキャビネットや書庫が不要になり、検索機能を使えば目当ての書類を数秒で探し出せます。
テレワーク・多拠点管理への対応
現場事務所・本社・協力会社など複数拠点で書類管理が必要な建設業では、クラウドでデータを一元管理することで、どこからでも書類にアクセスできる環境が整います。
工事の進捗確認や急なトラブル対応もスムーズになります。
税務調査への対応力向上
電子保存された書類は、検索機能を使ってすぐに必要な書類を提示できます。
紙書類のように「どこにあるか分からない」という事態を防げるため、税務調査時の対応も大幅に効率化されます。
建設業が対応を怠った場合のリスク
電子取引データを要件通りに保存していない場合、税法上、保存義務のある書類が保存されていないと判断される可能性があります。
その結果、青色申告の承認取消、過少申告加算税への10%加重、会社法違反による過料といったペナルティが科されるリスクがあります。
建設業では金額の大きな取引が多く、不正が発覚した際のリスクも相応に大きくなります。
建設業の実務対応で押さえるべきポイント
下請け業者から紙で受け取った書類の取り扱い
下請け業者から紙で受け取った書類は、スキャナ保存制度を利用して電子化できます。
200dpi以上の解像度で取り込み、「日付・金額・取引先」がわかるファイル名で保存することが推奨されます。
また、段階的に下請け業者への電子書類提出を依頼していくことで、業界全体の効率化につながります。
工事請負契約書の電子契約
工事請負契約書の電子契約は法的に有効です。電子署名法により、適切な電子署名が付与された電子契約書は手書き署名・押印と同等の法的効力を持ちます。
契約締結の迅速化や印紙税削減のメリットも大きく、遠方案件での活用が特に効果的です。
ただし、公共工事については発注者の指定により紙契約が求められる場合があるため、案件ごとに確認が必要です。
電子取引データの保存要件
電子取引データは「真実性の確保」(改ざん防止)と「可視性の確保」(検索性)の2要件を満たす必要があります。
具体的には、タイムスタンプが付与できるシステムの導入か、事務処理規程の策定と「取引年月日・金額・取引先」が明確なファイル名ルールの徹底が求められます。
現場写真・図面のデジタル保存
工事の進捗証明や品質管理の証拠となる現場写真は、撮影日時・撮影場所・撮影者の記録とともに改ざん防止機能付きのシステムで保存することが推奨されます。
図面は設計変更のたびに版管理を徹底し、どの時点でどの版が有効だったかを記録しておくことが重要です。長期保存を考慮してPDFやTIFF形式での保存が一般的です。
まとめ
建設業における電子帳簿保存法対応の核心は、電子で授受したすべての書類を電子データのまま保存することです。
対象書類が多く、下請けを含む多数の関係者が絡む建設業こそ、早期のシステム整備と社内ルールの整備が重要になります。
また、電子帳簿保存法の7年保存と建設業法の5〜10年保存という二重の要件を意識し、長い方の期間に合わせた保存体制を整えることが、法的リスクを回避する
うえで欠かせません。
建設業における電子帳簿保存法への対応は、単なる法令遵守にとどまらず、業務効率化と競争力向上の大きなチャンスです。
建設業界全体のデジタル化が進む中で、電子帳簿保存法への適切な対応は、事務部門の生産性向上と会社全体の競争力強化に直結します。法的要件を満たしながら、業務効率化も実現する電子化を推進することで、建設業界の未来を切り開いていきましょう。
建設業で電子帳簿保存法について関心ある方は是非とも一度ご連絡いただければ幸いです。