建設業DX事例Q&A｜経理担当者が知りたい請求書・報告書の効率化実例

2025年4月22日中小企業のDXに関する記事

「また今月も請求書の照合で深夜まで残業になってしまった」「現場からの報告書と会計データが合わず、何度も確認の電話をかけることになる」「月末の帳票作成で土日出勤が当たり前になっている」。建設業の経理担当者なら、こうした状況に身に覚えがあるのではないでしょうか。建設業経理協会の最新調査によると、建設業の経理担当者の91％が「業務量の多さ」を課題として挙げており、特に請求書処理と報告書の整合確認に多くの時間を割いています。月末・年度末には残業時間が月80時間を超える経理担当者も珍しくありません。

しかし、近年多くの建設会社がDX（デジタルトランスフォーメーション）導入により、これらの課題を解決しています。請求書の自動処理システムや工事管理システムとの連携により、経理業務の効率化を実現している事例が数多く報告されています。ただし、「うちの会社でも本当に効果があるのか」「どんなシステムを選べばよいのか」「費用対効果はどうなのか」といった疑問を持つ経理担当者も多いでしょう。

本記事では、実際に建設業でDXを導入した企業の事例をもとに、経理担当者が最も知りたいポイントをQ&A形式で詳しく解説します。

Q1：建設業の経理業務でDXを導入すると、具体的にどんな効果があるのでしょうか？

建設業の経理担当者にとって、DX導入の最も気になるポイントは具体的な効果です。実際の導入事例から、その効果を詳しく説明します。

作業時間の大幅短縮事例

埼玉県の中堅建設会社A社の事例

従業員数35名、年商6億円のA社では、経理担当者2名が以下の業務に苦労していました。

導入前の状況：

月間請求書処理：約200件、処理時間60時間
現場報告書の確認・照合：週15時間
月次決算作業：20日間
工事別収支の確認：月40時間

DX導入システム：

請求書処理自動化システム：180万円
工事管理システム連携：120万円
会計システム更新：200万円

導入後の効果：

請求書処理時間：60時間 → 15時間（75％削減）
報告書確認時間：15時間 → 3時間（80％削減）
月次決算期間：20日 → 7日（65％短縮）
工事別収支確認：40時間 → 8時間（80％削減）

神奈川県の工務店B社の事例

従業員数18名、年商2.5億円のB社では、経理担当者1名が以下の改善を実現しました。

導入前の課題：

協力会社からの請求書が月末に集中し、処理に追われる
現場写真と請求内容の照合に時間がかかる
工事進捗と支払い状況の把握が困難

導入システム：

建設業特化型ERPシステム：350万円
現場連携機能付き

導入効果：

請求書処理の自動化により、月末の残業時間が月45時間から15時間に削減
現場写真と請求書の自動照合により、確認時間が80％短縮
工事進捗と支払い状況がリアルタイムで把握可能

精度向上とミス削減効果

千葉県の専門工事会社C社の事例

電気工事を専門とするC社（従業員数25名）では、以下のミス削減効果を実現しました。

転記ミス：月平均5件 → 月平均0.5件（90％削減）
請求漏れ：月平均2件 → 月平均0件（100％削減）
重複支払い：年間3件 → 年間0件（100％削減）
仕訳ミス：月平均8件 → 月平均1件（87％削減）

経理担当者の声：「手作業による転記ミスがほぼなくなったことで、確認作業の時間が大幅に削減されました。また、精神的な負担も軽くなり、より戦略的な業務に時間を割けるようになりました」

Q2：DX導入にはどのくらいの費用がかかり、投資回収は可能でしょうか？

経理担当者にとって、システム導入の費用対効果は重要な検討材料です。規模別の導入費用と効果を具体的に紹介します。

小規模建設会社（従業員10〜20名）の事例

茨城県の住宅建築会社D社の事例

従業員数15名、年商1.8億円のD社の投資内容と効果：

初期投資：

経理システム：120万円
工事管理システム：80万円
連携・カスタマイズ：60万円
研修・導入支援：40万円
総投資額：300万円

年間削減効果：

人件費削減：月40時間 × 12ヶ月 × 時給3,000円 = 144万円
外注費削減（税理士費用等）：年間60万円
ミス削減による損失回避：年間30万円
総削減効果：年間234万円

投資回収期間：15ヶ月

中規模建設会社（従業員20〜50名）の事例

群馬県の総合建設会社E社の事例

従業員数42名、年商8億円のE社の投資内容と効果：

初期投資：

統合基幹システム：450万円
現場連携システム：200万円
データ移行・カスタマイズ：150万円
研修・サポート：100万円
総投資額：900万円

年間削減効果：

経理業務効率化：年間400万円
現場管理効率化：年間200万円
意思決定迅速化による機会利益：年間150万円
総削減効果：年間750万円

投資回収期間：14ヶ月

ランニングコストと継続効果

月額費用の目安

小規模システム：月額3万円〜8万円
中規模システム：月額10万円〜20万円
大規模システム：月額25万円〜50万円

継続的な効果

栃木県の建設会社F社（従業員数28名）では、システム導入3年後の効果を以下のように報告しています。

初年度効果：年間300万円の削減
2年目効果：年間420万円の削減（業務最適化による追加効果）
3年目効果：年間480万円の削減（新機能活用による更なる効率化）

投資回収のポイント：初期投資は大きく感じますが、多くの企業で12〜18ヶ月以内に投資回収を実現しています。特に経理業務の効率化効果は確実で、継続的な改善により効果は年々拡大する傾向があります。

Q3：システム導入で現在の業務フローはどのように変わるのでしょうか？

経理担当者にとって、システム導入後の業務フローの変化は大きな関心事です。具体的な変化を事例で説明します。

請求書処理フローの変化

導入前の請求書処理フロー

福島県の建設会社G社の従来フロー：

協力会社から紙の請求書受領
請求書の内容確認・検証（30分/件）
現場責任者への確認電話（15分/件）
会計システムへの手入力（20分/件）
承認プロセスの実施（10分/件）
支払処理の実行（10分/件）

1件あたり処理時間：85分

導入後の請求書処理フロー

協力会社から電子請求書受領（自動）
AI-OCRによる自動データ化（5分/件）
工事管理システムとの自動照合（2分/件）
例外処理のみ手動確認（5分/件、全体の20％のみ）
電子承認プロセスの実施（3分/件）
自動支払処理の実行（1分/件）

1件あたり処理時間：16分（81％削減）

月次決算フローの変化

導入前の月次決算フロー

長野県の建設会社H社の従来フロー：

各現場からの報告書収集（2日間）
報告書内容の手動確認・照合（3日間）
会計システムへのデータ入力（2日間）
工事別収支の手動計算（2日間）
試算表の作成・確認（1日間）
経営陣への報告資料作成（2日間）

総所要期間：12日間

導入後の月次決算フロー

各現場からの報告書自動収集（自動）
システムによる自動照合・例外レポート（0.5日間）
例外項目の手動確認（0.5日間）
工事別収支の自動計算（自動）
試算表の自動生成（自動）
経営陣への報告資料自動作成（0.5日間）

総所要期間：1.5日間（87％削減）

工事原価管理フローの変化

山梨県の建設会社I社の事例

導入前の課題：

現場からの材料費・労務費報告がバラバラ
工事別原価の把握に時間がかかる
予算と実績の乖離が大きい

導入後の改善：

現場からのリアルタイム報告により、日次で原価把握が可能
予算との乖離を自動アラートで早期発見
工事別収益性の即座な把握により、経営判断が迅速化

業務フロー変化のポイント：システム導入により、「事後確認」から「リアルタイム管理」へと業務の性質が変化します。これにより、経理担当者はより戦略的な業務に時間を割けるようになります。

Q4：システム導入時に発生する課題と対策はどのようなものでしょうか？

経理担当者にとって、システム導入時の課題とその対策を事前に知ることは重要です。実際の事例から学びましょう。

データ移行時の課題と対策

静岡県の建設会社J社の事例

発生した課題：

過去5年分の工事データが膨大で移行に時間がかかる
旧システムのデータ形式が新システムと互換性がない
顧客情報・協力会社情報の重複・不整合が多数発見

実施した対策：

データ移行の優先順位を設定（直近2年分を優先）
データクレンジングツールの活用
段階的移行により業務への影響を最小化
移行作業専用チームの設置

結果：

移行期間：当初予定3ヶ月 → 実際2ヶ月で完了
データ品質の大幅改善
移行後の運用トラブルゼロ

従業員の抵抗とトレーニング

愛知県の建設会社K社の事例

発生した課題：

ベテラン経理担当者からの「今までの方法で十分」という抵抗
新システムの操作方法習得に時間がかかる
現場担当者のシステム入力への協力が得られない

実施した対策：

導入前説明会の複数回開催
個別トレーニングの実施（1人2時間×3回）
操作マニュアルの独自作成
導入初期の並行運用期間設定
現場担当者向けの簡単操作ガイド作成

結果：

3ヶ月後には全員が新システムを活用
「以前より楽になった」との評価
現場からの協力も得られるように改善

システム障害時の対応

岐阜県の建設会社L社の事例

発生した課題：

導入から3ヶ月後にシステム障害が発生
復旧に2日間を要し、業務が停滞
バックアップデータの復元に時間がかかる

学んだ対策：

定期的なバックアップスケジュールの確立
障害時の業務継続計画（BCP）の策定
ベンダーとの緊急サポート契約の締結
重要データのローカル保存の併用

改善結果：

その後の障害発生時は30分以内に復旧
業務への影響を最小限に抑制
従業員の安心感が向上

課題対策のポイント：システム導入時の課題は避けられませんが、事前の準備と適切な対策により、影響を最小限に抑えることができます。特に、従業員の理解と協力を得ることが成功の鍵となります。

Q5：どのような基準でシステムを選択すべきでしょうか？

経理担当者の視点から、システム選択の重要なポイントを実際の選択事例とともに説明します。

機能要件による選択基準

三重県の建設会社M社の選択事例

M社が重視した機能要件：

必須機能：

建設業会計基準への完全対応
工事進行基準・完成基準の両対応
工事別原価管理機能
請求書の自動処理機能
既存システムとの連携機能

重要機能：

現場との情報共有機能
承認ワークフロー機能
レポート・分析機能
法定帳簿の自動作成

あると良い機能：

AI による自動仕訳提案
モバイル対応
API連携機能

選択結果：
機能要件を満たす3つのシステムから、操作性とサポート体制を重視して最終決定

コスト面での選択基準

滋賀県の建設会社N社の選択事例

N社が検討したコスト要素：

初期費用：

システム本体：200万円〜800万円
カスタマイズ：50万円〜300万円
データ移行：30万円〜100万円
研修・サポート：20万円〜80万円

ランニングコスト：

月額利用料：5万円〜30万円
保守・サポート：年間20万円〜100万円
アップデート費用：年間10万円〜50万円

総保有コスト（5年間）：

Aシステム：1,200万円
Bシステム：800万円
Cシステム：600万円

選択結果：
コストだけでなく、期待効果を考慮してBシステムを選択

導入実績とサポート体制

京都府の建設会社O社の選択事例

O社が重視した評価項目：

導入実績：

建設業での導入実績数
同規模企業での成功事例
継続利用率
ユーザー満足度

サポート体制：

導入時のサポート内容
運用開始後のサポート体制
トラブル時の対応時間
バージョンアップ対応

評価結果：

建設業実績：A社500件、B社300件、C社100件
サポート体制：A社が最も充実
継続利用率：A社95％、B社90％、C社85％

選択結果：
総合的な評価でA社システムを選択

導入後の拡張性

大阪府の建設会社P社の選択事例

P社が考慮した将来性：

事業拡大に伴うユーザー数増加への対応
新機能の追加・アップデート頻度
他システムとの連携拡張性
クラウド対応・モバイル対応
AI・IoT等の新技術への対応

選択結果：
初期費用は高めだが、将来性を重視したシステムを選択

システム選択のポイント：価格だけでなく、自社の業務に適合するか、将来の事業拡大に対応できるか、十分なサポートが得られるかを総合的に判断することが重要です。

Q6：導入後のフォローアップや継続的改善はどのように行うべきでしょうか？

システム導入後の継続的な改善について、実際の事例から学びましょう。

定期的な効果測定

兵庫県の建設会社Q社の事例

Q社が実施している測定項目：

月次測定項目：

請求書処理件数と処理時間
月次決算完了日数
システム利用率
エラー発生件数

四半期測定項目：

業務効率化による時間削減効果
コスト削減効果
従業員満足度
顧客満足度

年次測定項目：

投資回収状況
システム活用度の向上
新機能活用による追加効果
競合他社との差別化効果

測定結果の活用：

毎月の改善点の抽出と対策実施
四半期ごとの運用見直し
年次でのシステム拡張計画策定

従業員のスキルアップ

奈良県の建設会社R社の事例

R社が実施している継続的教育：

定期研修：

月1回の操作スキル向上研修
四半期ごとの新機能説明会
年1回の外部専門家によるセミナー

自己学習支援：

e-ラーニングシステムの導入
操作マニュアルの定期更新
FAQ集の充実
ユーザー同士の情報共有会

成果：

システム活用度：導入時60％ → 現在95％
操作に関する質問件数：月20件 → 月3件
新機能の活用率：80％以上

システムの機能拡張

和歌山県の建設会社S社の事例

S社が実施した段階的機能拡張：

第1段階（導入後6ヶ月）：

基本的な経理機能の安定運用
請求書処理の自動化
基本レポート機能の活用

第2段階（導入後1年）：

工事管理システムとの連携強化
現場からのリアルタイム報告機能追加
承認ワークフローの導入

第3段階（導入後2年）：

AI による自動仕訳機能の導入
予算管理機能の強化
経営ダッシュボードの構築

第4段階（導入後3年）：

IoTセンサーとの連携
予測分析機能の追加
他社システムとのAPI連携

効果の推移：

第1段階：年間200万円の効果
第2段階：年間350万円の効果
第3段階：年間500万円の効果
第4段階：年間650万円の効果

継続的改善のポイント：システム導入は「ゴール」ではなく「スタート」です。定期的な効果測定と継続的な機能拡張により、投資効果を最大化することができます。

Q7：小規模な建設会社でもDX導入の効果は期待できるでしょうか？

規模の小さな建設会社でのDX導入事例と効果について詳しく説明します。

従業員10名以下の小規模事例

岡山県の工務店T社の事例

企業概要：

従業員数：7名（経理担当者1名）
年商：1.2億円
業種：住宅建築・リフォーム

導入前の課題：

経理担当者1名で全ての経理業務を担当
月末の請求書処理で深夜まで作業
工事の進捗と支払いの管理が混乱
税理士への資料作成に時間がかかる

導入システム：

小規模建設業向けクラウドシステム
初期費用：60万円
月額費用：3万円

導入効果：

月末処理時間：40時間 → 12時間（70％削減）
税理士資料作成：8時間 → 2時間（75％削減）
工事別収支把握：不可能 → リアルタイム可能
年間効果：約180万円
投資回収期間：5ヶ月

個人事業主の事例

広島県の個人事業主U氏の事例

事業概要：

形態：個人事業主
年商：6,000万円
業種：内装工事
従業員：本人 + パート1名

導入前の状況：

全ての経理作業を事業主が担当
土日も事務作業に追われる
請求漏れや支払い遅れが発生

導入システム：

個人事業主向け簡易システム
初期費用：25万円
月額費用：8,000円

導入効果：

事務作業時間：週20時間 → 週8時間（60％削減）
請求漏れ：月2件 → 0件
支払い遅れ：月1件 → 0件
土日の事務作業：ほぼ解消

小規模企業向けシステムの特徴

山口県の建設会社V社の導入例

小規模企業に適したシステムの特徴：

操作の簡単さ：

専門知識不要の直感的操作
複雑な設定不要
短時間での習得が可能

コストパフォーマンス：

初期費用：30〜100万円
月額費用：1〜5万円
年間ROI：200〜400％

必要十分な機能：

請求書処理の自動化
基本的な工事管理
簡易的な分析機能
法定帳簿の自動作成

充実したサポート：

導入時の手厚いサポート
電話・メールでの質問対応
定期的なフォローアップ

小規模企業でのDXのポイント：規模が小さくても、適切なシステムを選択すれば大きな効果を得ることができます。重要なのは、身の丈に合ったシステムを選択し、段階的に活用範囲を拡大することです。

まとめ：建設業経理担当者のためのDX導入指針

建設業の経理担当者にとって、DX導入は日々の業務負荷を大幅に軽減し、より戦略的な業務に集中できる環境を作る有効な手段です。本記事で紹介した事例から、以下の重要なポイントが見えてきました。

まず、DX導入の効果は確実に期待できます。多くの事例で、請求書処理時間の70〜80％削減、月次決算期間の60〜80％短縮を実現しています。これにより、経理担当者の残業時間が大幅に削減され、ワークライフバランスの改善にもつながっています。

投資回収についても、多くの企業で12〜18ヶ月以内に投資回収を実現しており、費用対効果は十分に期待できます。特に、人件費削減効果や業務効率化による機会利益を考慮すると、投資価値は非常に高いと言えます。

システム選択においては、価格だけでなく、自社の業務要件への適合性、導入実績、サポート体制を総合的に評価することが重要です。また、将来の事業拡大や機能拡張の可能性も考慮し、長期的な視点で選択することが成功の鍵となります。

導入時には課題も発生しますが、適切な準備と対策により、影響を最小限に抑えることができます。特に、従業員の理解と協力を得ることが成功の前提条件となります。

最後に、DX導入は「導入して終わり」ではありません。継続的な効果測定と改善により、投資効果を最大化し、持続的な競争優位を構築することが可能です。

建設業の経理担当者の皆様が、本記事を参考にDX導入を検討し、より効率的で充実した業務環境を実現されることを願っています。まずは現状の課題を整理し、小さな一歩から始めてみることをお勧めします。

※本記事は、建設業におけるDX導入事例や参考情報に基づいて構成しています。記載された効果は一例であり、成果を保証するものではありません。導入検討の際は、専門家への相談や最新情報の確認をお願いします。

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